特例有限会社の代表者は「取締役」?「代表取締役」とは限らない理由
特例有限会社の取締役と代表取締役
有限会社制度は会社法の施行により廃止されましたが、施行前から存在する有限会社は「特例有限会社」として存続しています。
この特例有限会社の登記事項を確認すると、株式会社とは異なる点があり、代表者の肩書をめぐって「なぜ代表取締役とならないのか」と疑問を持たれることがあります。
株式会社の場合、必ず代表取締役を登記
株式会社では、取締役が1名しかいない場合でも、その取締役を「代表取締役」として登記する必要があります。
・取締役1名 → 取締役A/代表取締役A
・取締役2名(全員代表権あり)→ 取締役AB/代表取締役AB
・取締役2名(1名のみ代表権あり)→ 取締役AB/代表取締役A
このように、株式会社においては「会社の代表=代表取締役」という構造が明確に登記に反映されます。
特例有限会社の場合、代表取締役は必ずしも登記されない
一方で特例有限会社は仕組みが異なります。
取締役が1名しかいない場合、その者は会社を代表しますが、登記上の肩書は「取締役」となり、「代表取締役」とは記載されません。
・取締役1名 → 取締役A(代表権はあるが「代表取締役」とは登記されない)
・取締役2名(全員代表権あり)→ 取締役AB(代表取締役の登記なし)
・取締役2名(1名のみ代表権あり)→ 取締役AB/代表取締役A
つまり、特例有限会社において「代表取締役」という登記は、複数の取締役の中から代表者を選定した場合に限られるのです。
実務上の戸惑いと対応
この違いから、特例有限会社の取締役が実際には会社を代表しているにもかかわらず、登記簿や印鑑証明書には「代表取締役」と記載されないケースがあります。
取引先に「本当に代表者なのか」と誤解されることもありますが、法律上は何ら問題はありません。
なお、名刺や日常的な使用において「代表取締役」「社長」「CEO」などと記載する方もいますが、契約書など正式な書類では登記簿・印鑑証明書の表記に合わせて「取締役」とするのが一般的です。
本コラムのまとめ
特例有限会社では、取締役1名であっても「代表取締役」と登記されるわけではなく、「取締役」として登記されます。
株式会社と同じ感覚で考えると違和感がありますが、これは会社法上の制度的な違いであり、取締役である以上は当然に会社を代表する権限を持っています。
肩書の違いに戸惑うことはあっても、法的効力には影響しませんので安心して実務に臨むことができます。
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本日は、特例有限会社の代表者は「取締役」?「代表取締役」とは限らない理由について解説いたしました。
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