吸収合併

逆さ合併の実務パターンと留意点

想定ケース

完全親子関係にある会社A(親会社)と、その兄弟会社B・C(いずれもAの100%子会社)が存在するとします。この場合、兄弟会社同士と親会社を絡めた合併は複数のパターンが考えられます。

AがCを合併し、続いてBがAを合併する場合

・Aは一旦存続会社となるが、直後にBに吸収されて消滅する。
・Cの債権債務は、形式的にはAに承継されるが、最終的にはBに移転。
・債権者保護手続上は、存続会社Aを基準として進める。Bは当事者ではないため、Bの情報開示までは不要。ただし、Cの関係者への説明としてAB合併の情報を補足するのが望ましい。

CがAを合併し、その後BがCを合併する場合

・Cが親会社Aを合併するため、A株主にC株式を交付する必要が生じる。
・Aが保有するB株式もCに承継され、Cが新たにBの完全親会社となる。
・続いてBがCを合併する際には、Cの株主(元のA株主)に対してB株式を交付する必要がある。
・結果的に、A株主は「C株式を取得した直後にB株式と交換」という流れとなり、複雑で煩雑な方法となる。

BがAとCを同時に合併する場合

・法的には「BとA」「BとC」の2件の合併手続きを同時に進める。
・契約は相互に条件付けされ、「どちらかが成立しなければ両方しない」とする合意が一般的。
・A株主に対しては、Cとの合併とは別に、B株式を交付すればよい。
・合併対価は、Cの株主(A)には無対価とされる場合が多い。

実務的な検討ポイント

・法務面→最も整理しやすいのは「BがCを合併 → BがAを合併」の順序と考えられる。
・会計・税務→合併順序により処理が異なるため、税務や連結会計上の影響を確認する必要がある。
・少数株主の有無→完全親子・完全兄弟関係であれば手続きは簡素化できるが、少数株主が存在すると株式買取請求や情報開示の問題が生じる。

合併パターン比較

パターン 内容 合併対価の扱い 債権者保護・情報開示 実務上の整理のしやすさ
① BがCを合併 → BがAを合併 兄弟会社合併の後、親会社合併 無対価(兄弟合併)、A株主へB株交付 Aの債権者に通常どおり手続 ◎(最もノーマル)
② BがAを合併 → BがCを合併 親会社合併の後、兄弟会社合併 Aの保有するC株承継で無対価 A株主へB株交付 ○(整理可能)
③ AがCを合併 → BがAを合併 親会社が兄弟を合併後すぐ消滅 A株主→B株交付 Cの債権債務は最終的にBへ
④ CがAを合併 → BがCを合併 子会社が親会社を合併後、兄弟合併 A株主→C株→直後にB株と交換 煩雑、株主に二段階交付 △(あまり推奨されず)
⑤ BがAとCを同時に合併 Bが親会社・兄弟会社を同時に吸収 A株主へB株交付、Cは無対価 契約は連動条件付け ○(同時処理可能)


本コラムのまとめ

・兄弟会社と親会社を絡めた合併は複数のパターンが可能であり、いずれも法律上は成立可能。
・ただし、合併対価の交付や情報開示の程度が異なるため、実務的には「BがCを合併 → BがAを合併」という形が整理しやすい。
・会計・税務上の影響や少数株主の存在がある場合は、慎重な検討が必要。

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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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