支店登記はいつ必要か?実務上の基準と判断
支店の定義と判例
会社法上の「支店」とは、名称によらず実質で判断されます。
判例(最判昭和39年3月10日)によれば、
「本店に従属し、本店と異なる場所に設けられ、一定範囲の営業について独立性をもって活動できる人的・物的組織を備える営業所」
が支店とされています。
したがって、「支社」「営業所」と称していても、実質が上記に当たれば登記義務のある支店となります。
実務での運用
もっとも、現実には「支店登記がされていない会社」や「支店かどうか判断に迷う登記」が数多く見られます。
大企業でも本店以外に多数の拠点があるにもかかわらず、登記は一部地域だけということも少なくありません。
一方で、金融機関など一部の業種は、法律や業務規制により「支店」と呼ばれる拠点はすべて登記することが求められており、商社などでは海外支店まで含めて登記例が多く見られます。
支店登記をめぐる判断
支店であれば、登記義務に加えて、
・重要書類の備置義務
・支配人選任の可能性(独立して取引を行うための制度)
といった効果が生じます。
一方で、登記の負担もあり、どこまでを支店とするかの判断は会社に委ねられている部分が大きいといえます。
実際には、「支店とみなす基準」を会社ごとに設け、その判断に取締役会の決議を伴うかどうかが重要なポイントとなります。
支店設置の取締役会決議がなければ、実務上は支店ではないと整理されることが多いようです。
名称と実態の乖離
理論上は「名称は関係ない」とされますが、実務では「支店」「支社」「営業所」など名称によって内部的なランク付けを行っている企業もあります。
会社のウェブサイトや案内にある拠点表示からは、法的に支店登記が必要かどうかを判断することは困難です。
本コラムのまとめ
・「支店」は名称ではなく実質で判断される。
・実務では会社ごとの基準設定や取締役会の決議が支店性の判断に大きく影響する。
・支店登記を行うと、支配人制度など独立した営業活動の利点も享受できる。
・法的定義と実務運用の間には隔たりがあり、最終的には会社の経営判断に委ねられる面が大きい。
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本日は、支店登記はいつ必要か?実務上の基準と判断について解説いたしました。
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