現物出資の手続きにおける株主総会決議のあり方
現物出資を伴う募集株式の発行
現物出資を伴う募集株式の発行では、株主総会決議の範囲をどこまで具体化すべきか、実務上迷うことがあります。
今回のケースでは、急ぎの増資対応のために、招集通知の段階では詳細が固まっていませんでした。
そのため、株主総会の議案を極力シンプルにし、会社法第200条に基づき募集事項の決定を取締役会に委任する方式 が選択されました。
違和感の背景
「現物出資を伴うのに、株主総会で具体的な承認を得なくてもよいのか?」という疑問は、実務に携わる方なら一度は感じる点でしょう。
しかし会社法上、「現物出資だからこそ株主総会で特別に決議しなければならない」といった例外規定は存在しません。
つまり、通常の募集株式発行と同様に、一定の事項を株主総会で決定し、その範囲内で取締役会に委任することが可能です。
実際の処理
最終的に株主総会では、
・発行株式数の上限
・発行価額の下限
のみを決議し、具体的な募集事項(出資財産や割当の詳細)は取締役会に委任する方式を採用しました。
旧商法との比較
会社法施行前の商法下では、現物出資の規制はより厳格で、検査役の調査を中心に「株主の利益保護」の観点が強く意識されていました。
会社法では、税理士等の証明制度や一定の場合の検査役不要規定など、柔軟な制度設計となっており、その延長線上で「株主総会決議の委任」も広く認められていると理解できます。
本コラムのまとめ
・現物出資でも、株主総会での承認事項を最小限にとどめ、取締役会に委任することは可能。
・法律上禁止されていない以上、形式的に適法であれば実務上も認められる。
・ただし、外部株主が存在する場合には「透明性の確保」が極めて重要。説明不足は不要な不信感を招きかねないため、通知・議事録に適切な情報を盛り込むことが望ましい。
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