増資

払込金額・資本金・現物出資財産の価額の関係、実務で迷いやすい論点の整理

募集株式の発行手続き

募集株式の発行に関して、実務では「払込金額」「資本金」「現物出資財産の価額」という三つの数字をどう扱うかが常に問題になります。

・払込金額(発行価額 × 株式数)
・払い込まれた額(実際の入金額や現物出資の評価額)
・資本金に計上すべき額(払込額の2分の1以上)

一見すると単純に思えますが、実際の案件では端数や余りが出たり、現物出資の簿価と時価の差が大きかったりして、「どの金額を基準に登記や証明書を作れば良いのか?」と悩むケースが少なくありません。
本コラムでは、この3つの数字の関係を整理し、実務で問題になりやすい端数処理・現物出資・登記での添付書類の扱いを解説します。

現金出資と現物出資の違い

・現金出資→実際に払い込まれた金額が基準。
・現物出資→会社計算規則に基づく価額が基準。

したがって、「払込金額」=「財産価額」ではないケースがあり得る。

金銭出資の場合

・払込金額→会社が決定する株式1株あたりの発行価額。
・払い込まれた額→引受人が実際に払い込んだ金額。少なければ失権、多ければ超過分は問題なし。
・資本金→払い込まれた総額の2分の1以上。

注意点は「払込金額の総額の2分の1」と決議してしまうと、実際の払込額が上回った場合に違法状態になるリスク。
そのため、議案では「実際に払い込まれた額の2分の1以上を資本金に計上」とするのが安全です。

現物出資の場合

現物出資特有の論点は「財産価額の扱い」と「払込額の算定基準」です。

・金銭以外の財産の価額→募集事項として決議。通常は時価。簿価基準で会計処理する場合もあり。
・払込みがあった額→会社計算規則に基づき算定。簿価ベースになる場合がある。
・資本金→その「払込額」の2分の1以上。

例:簿価10万円・時価100万円の財産を出資
・払込額:10万円(簿価)
・資本金:5万円以上
・財産価額:100万円

財産価額と資本金の間に大きな乖離が生じても、計算規則上は適法。
この点に違和感を覚える専門家は多いですが、現行制度では許容されています。

割り切れない場合・端数処理

実務では以下のような場面で端数や余りが生じます。

・海外送金→為替レートで円換算するため、事前に金額が確定しない。
・複数債権の現物出資→合計金額÷株数で割り切れず余りが出る。
・払込金額と実際の入金の差異→貸付金と出資金を合算して振込まれる等。

対処方法(議案の工夫)

「払込金額の総額を超える払込があった場合は、超過額を資本準備金に算入する」
「払込額が決定金額を超えた場合でも、超過分は払込額に参入しない」

このように決議時に明記しておくことで、補正リスクを防げます。

払込時の混合入金の取扱い

実務上よくあるのが、

・出資金と貸付金が一緒に入金される
・株式と社債の代金が一緒に入金される

といったケースです。
この場合に備え、募集事項の決議において超過入金の扱いをあらかじめ決めておくのが安全です。

例:募集事項での決議パターン

「払込金額の総額を超える払込みがあった場合は、超過額全額を資本準備金とする」
「払込金額の総額を超える払込みがあった場合でも、超過額は資本準備金としない」

こうしておくことで、登記の際に添付する
・払込みがあったことを証する書面
・資本金の額の計上に関する証明書

の整合性が確保されます。

実務整理(比較表)

区分 現金出資 現物出資
払込金額 会社が定めた発行価額×株式数 定款で定めた財産の価額
払込みがあった額 実際に払い込まれた額 会社計算規則に基づく価額(簿価 or 時価)
資本金等増加限度額 実際に払い込まれた額 現物出資財産の価額
資本金計上額 上記の2分の1以上 上記の2分の1以上


登記実務での取扱い

発行価額総額と財産価額の不一致→補正対象とはされず、登記は受理されるケースが多い。
資本金計上→必ず「払込みがあった額」を基準に計算。
添付書類→払込証明書や資本金計上証明書には、実際に払い込まれた額を基準に記載。

→現物出資案件では「財産価額」と「払込額」が異なるのが通常であり、あくまで計算規則ベースで処理するのが実務の基本。

実務的留意点

・決議文案に「払込額ベースで資本金を計上」と明記
・端数や余りが出る場合は処理方法を決議に反映
・税務上の評価額も併せて確認(特に親子間や上場株式出資の場合)
・登記官によって判断が揺れることがあるため、事前相談で擦り合わせを行う

本コラムのまとめ

・現金出資と現物出資では「払込額」の意味が異なる
・資本金は常に「払込額ベース」で算定
・発行価額・払込額・財産価額は一致しなくても登記は可能
・端数や余りが出る場合は、決議で処理方法を明確化することが重要

募集株式発行の登記は一見ルーティンでも、細部の数字処理で補正リスクが潜んでいます。
「計算方法を決議に書く」「実際の払込額を基準に資本金を算定」という2点を押さえることで、安全に進めることができます。

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払込金額・資本金・現物出資財産の価額の関係、実務で迷いやすい論点を解説いたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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