種類株式

種類株主総会の排除と拒否権の交錯、株主保護とのバランスをめぐる検討

拒否権付株式の強力さと調整の難しさ

種類株式の設計において、拒否権付株式は非常に強力なツールです。
特定の議案について株主総会の可決を覆すことができるため、他の株主にとっては大きな牽制要素となります。
もっとも、拒否権は「否決する権利」にすぎず、選解任権のように積極的に役員を選ぶ権限はありません。
そのため、実務上は 定款変更や組織再編、解散決議など重要な事項に絞って付与するのが一般的です。

しかし、会社によっては「株主総会の決議事項すべてに拒否権を付与する」という非常に強力な種類株式を導入する会社もあります。
形式的にはシンプルで「株主総会決議すべてにつき種類株主総会の決議を要する」と定めれば済むのですが、果たしてそれで適法に機能するのか、検討が必要です。

法定の種類株主総会と拒否権の関係

会社法322条は、「種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合」に限定して種類株主総会の決議を要求しています。
ここに拒否権を重ねた場合、どのように整理できるでしょうか。

選択肢は次の3つが考えられます。

322条で排除できる種類株主総会はすべて排除したうえで、株主総会決議事項すべてに拒否権を付与する。
法定の種類株主総会は排除せず、株主総会決議事項すべてに拒否権を付与する。
法定の種類株主総会は排除せず、拒否権は法定の種類株主総会以外の決議事項にのみ付与する。

このうち、会社法上排除できるのは199条4項、238条4項、322条1項の3種類です。
特に論点となるのは322条。限定列挙か例示列挙か結論は定まっていませんが、いずれにせよ「おそれがある場合に必要」とされています。

また、322条は「全部排除するか、全く排除しないか」しか選択できず、一部排除はできないと解されています。
そのため、特定の事項のみを対象にしたい場合は、いったん322条を全部排除したうえで拒否権を付け直すという形を取るほかないとされています(別冊商事法務No.295参照)。

株式併合と買取請求権のねじれ

では、実際の事例を想定してみましょう。

仮に株式併合を行う場合、種類株主に損害を及ぼすおそれがあれば322条に基づき種類株主総会の決議が必要です。
ところが、定款で322条を排除している場合には、株式併合に際して種類株主総会は不要とされる一方で、株式買取請求権(会社法116条)が発生します。
さらに、この状況で拒否権が付されているとどうなるか。322条の種類株主総会は排除されているにもかかわらず、拒否権の発動により結局は種類株主総会が必要となります。その結果、

322条に基づく場合→種類株主総会は必要、ただし株式買取請求権は発生しない。
322条を排除し拒否権で担保する場合→種類株主総会は必要だが、株式買取請求権も発生する。

という、手続の帰結に差異が生じます。
拒否権を活用することで株主保護が過剰に重複する可能性があり、制度設計上の注意点といえます。

種類株主総会の重複と整理の仕方

最後に、種類株主総会の「重複」についてです。
例えば、発行可能株式総数を増加する定款変更は、322条上「損害を及ぼすおそれ」があれば種類株主総会が必要です。
同時に、拒否権付株式にも種類株主総会が要求されるとすると、二重の決議が必要になってしまうのでは?という疑問が生じます。

実務上は、同一事項について複数の根拠から種類株主総会が必要となっても、開催は一度で足りると解されます。
条文の趣旨も株主保護にあるため、重複して複数回の開催を強制する合理性はありません。
もっとも、定款設計で「322条排除+拒否権付与」を併用する場合は、買取請求権の有無や株主通知の要否など、株主側の手続負担に差が出るため、制度趣旨の違いを理解したうえで慎重に設計する必要があるといえるでしょう。

本コラムのまとめ

・種類株主総会の排除と拒否権は似て非なる仕組みであり、重ねると制度趣旨の違いから株主保護の効果が二重化する。
・特に株式併合の場面では、322条を排除するか否かによって、株式買取請求権の有無という大きな差が生じる。
・同一事項について複数の根拠で種類株主総会が必要な場合でも、開催は一度で足りる。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、種類株主総会の排除と拒否権の交錯、株主保護とのバランスをめぐる検討をおこないました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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