全部取得条項付種類株式と定款変更の実務論点
全部取得条項付種類株式とは
全部取得条項付種類株式とは、株主総会の決議により当該種類の株式の全部を会社が取得できるという内容を持つ株式です。
実務では、スクイーズアウト手続の手段として利用されるケースが多く見られます。
典型的な手順は以下のとおりです。
例:新たに「A種類株式」を設ける。
2.普通株式に全部取得条項を付加する定款変更
3.普通株式に関する種類株主総会で、②と同一内容を承認
4.全部取得条項付株式の取得決議を株主総会で行う
この流れにより、実質的に「株式併合」と同様の効果を実現できます。
当て馬株式は必要か?
従来は「普通株式に全部取得条項を付けるためには、あらかじめ種類株式発行会社にしておく必要がある」と説明され、当て馬株式(形式的に新設する別種類株式)を先に置く方法が紹介されてきました。
しかし、実務経験や文献調査からは、次の点が確認されています。
・取締役等の選解任権付種類株式(会社法108条1項9号)のように、種類株式の新設と同時に既存株式の内容を変更できるケースがある。
・よって、全部取得条項の場合に限って「当て馬株式」を要求する理由は乏しい。
・実際に、前提なしで普通株式に条項を付した事例も存在する。
したがって、効力発生時点で種類株式発行会社であれば足り、当て馬株式は不要と考えられます。
法務局の取扱いと学説
この点については学説・文献上も同様の議論があります。
会社法コンメンタール4(商事法務)P92(山下友信教授)
「普通株式に全部取得条項を付す場合、同時に種類株式を新設すれば足りる」との整理。
ただし、実務対応としては、法務局に事前相談するのが安全です。
ある出張所では「問題なし」と確認されたケースもありますが、管轄によって見解が異なるリスクがある点には留意が必要です。
種類株主総会の要否
さらに気になるのは、種類株主総会の要否です。
・会社法111条2項は「種類株式発行会社が~」と規定しているため、効力発生前に種類株式発行会社でない場合は不要と解されます。
・ただし、定款変更後は種類株式発行会社となるため、将来の取扱いに実務的な不安が残る分野です。
結論として、普通株式に全部取得条項を付す場合、
・当て馬株式を新設しなくても実行可能
・種類株主総会の要否は「効力発生前は不要」とするのが有力
全部取得条項付種類株式と定款変更の実務論点
・全部取得条項付種類株式は、スクイーズアウトに用いられる重要な仕組み。
・当て馬株式を必ずしも前提とする必要はなく、同時決議で対応可能。
・ただし、登記実務では管轄法務局の判断に左右される部分もあるため、事前相談が推奨される。
手続きのご依頼・ご相談
全部取得条項付種類株式と定款変更の実務論点について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。