種類株主総会排除規定を新設する際の株主全員同意の要否と議事録記載方法
問題の背景
会社法322条は、株主に不利益を与えるおそれがある場合、種類株主総会の決議を必要としています。
もっとも、同条2項に基づき「種類株主総会を不要とする旨の定款規定」を設けることが可能です。
ただし、その場合には同条4項により、普通株主全員の同意が必要とされています。
この規定は実務上、種類株式を新設する場面でしばしば問題になります。定款に排除規定を入れたいが、株主の同意をどのように得て、登記の添付書面をどう整えるかが焦点となるのです。
実務上の論点
ある案件で次のような確認が行われた。
1.普通株主全員の同意は必須か。
2.全員出席の株主総会で全員が議案に賛成した場合、別途同意書は不要か。
3.議事録に「会社法322条4項に基づく同意」の文言を明記すれば、同意書を省略できるか。
この確認を経て明らかになったのは、同意は必要だが、同意書の形でなくてもよいという点です。
具体的には、株主総会議事録の中に条文に基づく同意の事実が記載されていれば、別紙の同意書を添付する必要はないと整理されました。
議事録記載の要点
単に「株主全員が定款変更に賛成した」と記録するだけでは不十分です。
議事録の中で、322条4項の同意であることを明示する必要があります。
例としては、以下のような記載が想定されます。
このように書くことで、議事録自体が同意書の役割を果たすことになり、添付書面を簡略化できます。
ケース | 添付要否 | 留意点 |
---|---|---|
全員出席総会で単に「議案に賛成」と記載 | ✕ 足りない | 条文に基づく同意の明記がないため不十分 |
全員出席総会で「会社法322条4項に基づき同意した」と議事録に記載 | ○ 同意書省略可 | 記録を援用できる |
実務的な結論
以上を整理すると、実務上の取扱いは次のとおりです。
・株主全員の同意は必須。
・同意書の添付は原則必要だが、全員出席総会の議事録に明記すれば代替可能。
・「単なる賛成」と「条文上の同意」を区別することが重要。
登記官も、議事録の記載に具体性があれば、同意書添付を省略可能と判断している事例が確認されています。
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種類株主総会排除規定の新設と株主全員同意の要否について解説いたしました。
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