取締役の資格要件と欠格事由を最新の登記実務の視点から解説
令和の改正会社法を踏まえた「取締役資格」の最新実務
会社の経営を担う取締役は、法令上の欠格事由や任期、辞任・解任といったルールに強く縛られます。
特に司法書士が関わる登記の場面では、「その人物が取締役として適格か否か」を正しく判断し、適切に書類を整えることが求められます。
本稿では、令和の改正会社法を踏まえた「取締役資格」の最新実務について整理します。
未成年者は取締役になれるのか
会社法上、未成年者を取締役とすることを禁止する規定はありません。意思能力が認められる年齢であれば、未成年でも就任は可能です。
ただし、登記実務上は印鑑証明書の添付が求められるため、印鑑登録が可能な 15歳以上 でなければ現実的には登記できません。
また、極端に年少で意思能力を欠く場合は、そもそも取締役就任の効力が否定されると解されます。
成年被後見人・被保佐人の扱い
かつては「成年被後見人・被保佐人」は取締役欠格事由とされていましたが、令和元年改正により会社法331条から削除されました。したがって、これらの者であっても就任そのものは可能となっています。
もっとも、成年後見開始の審判を受けた場合は民法653条3号により委任関係が終了するため、取締役の地位も失うことになります。
一方で、保佐・補助・任意後見契約が効力を生じた場合は「委任終了事由」には当たらず、直ちに退任とはなりません。
破産手続開始決定と取締役資格
会社法改正により「破産手続開始の決定を受けた者」も欠格事由から外されました。
しかし、民法653条2号により委任関係が終了するため、破産手続開始が確定すれば取締役の地位を失います。
もっとも、破産からの復権前であっても、改めて株主総会で選任されれば取締役に再就任することは可能です。
実務上の登記事項
司法書士が登記を申請する際には、以下のような点に注意が必要です。
・退任事由を「資格喪失」とは記載せず、あくまで「退任」と記載する。
・成年後見開始の場合は「成年後見登記事項証明書」、破産の場合は「破産手続開始決定書」などを添付書類とする。
・未成年者の場合は必ず印鑑証明書を添付し、意思能力を欠く恐れがないかも確認する。
手続きのご依頼・ご相談
今回の改正により、形式的な理由で一律に取締役から排除されるケースは減りました。
しかし、民法上の委任終了事由との関係から、依然として「登記実務上は退任にあたる」ケースは残されています。
司法書士としては、依頼を受けた際に対象者の法的地位を正しく把握し、登記事項や添付書類に誤りがないよう慎重に判断することが求められます。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。