種類株式における参加・非参加、累積・非累積の仕組みと実務上の取扱い
参加株式と非参加株式、累積型と非累積型の整理
会社法施行前の旧商法時代、種類株式の内容といえば「剰余金の配当」および「残余財産の分配」に関するものに限られていました。
当時は「議決権の制限」は種類株式の内容とはされておらず、定款を確認しないと議決権の有無は分かりませんでした。そのため、議決権がない株式については定款を添付する必要があったのです。
また、当時は種類株式の発行制限が存在し、発行済株式総数の4分の1まで、その後は2分の1までとされ、最終的には非公開会社においては制限が撤廃されました。
さらに会社法施行時には「全部取得条項付種類株式」や「拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)」などが登場し、種類株式のバリエーションは大幅に拡大しました。
その中で「参加・非参加」「累積・非累積」という内容は、古くから存在する種類株式の仕組みであり、剰余金の配当に関する内容として位置付けられています。
参加型と非参加型の仕組み
非参加型の場合、優先配当額を受け取った株主は、それ以上の配当には加わりません。
例えば優先配当額が100万円、総配当額が300万円の場合、まず優先株主が100万円を受け取り、残り200万円は普通株主のみが配当を受けることになります。
定款上は「優先株主に対しては、優先配当額を超えて配当しない」といった表現を用いることが多くみられます。
一方、参加型の場合は、優先配当後に普通株主と同様に追加配当に参加することができます。
一般的な規定例としては、優先株主がまず優先配当額(例:100万円)を受け取り、その後普通株主が同額(100万円)の配当を受けた上で、残余の配当(100万円)を普通株主と優先株主で分配するという「単純参加型」の仕組みがあります。
区分 | 優先配当後の取扱い | 普通株主との配当関係 |
---|---|---|
参加型 | 優先配当を受けた後、残余配当に参加できる | 普通株主と同額まで配当後、残額を分配 |
非参加型 | 優先配当のみ受け取り、それ以上は受け取れない | 残余は普通株主のみが受け取る |
このように、参加か非参加かによって、配当の配分結果には大きな差が生じます。
累積型と非累積型の仕組み
累積型とは、ある年度に優先配当が実施されなかった場合、その未払分を翌年度以降に繰り越して配当する仕組みをいいます。
例えば前年に100万円の優先配当が実施されず、今年100万円の配当があった場合、今年の配当は前年分に充当され、優先株主は過去の未払分を受け取ることができます。場合によっては、この累積分に利息を付けることもあります。
一方、非累積型の場合は、配当が行われなかった年度の優先配当分は切り捨てられ、翌年以降に繰り越されることはありません。
実務的には、従業員持株会のような株主の場合には「非累積」が用いられることが多く、逆に外部の第三者に優先株式を保有してもらう場合には「累積」とするケースが多いとされています。
区分 | 未払配当の取扱い | 典型的な利用場面 |
---|---|---|
累積型 | 翌年度以降に繰り越し、支払われる | 外部投資家向け優先株式 |
非累積型 | 繰り越されず、未払分は消滅 | 従業員持株会など内部株主向け |
規定漏れ時の取扱いと実務上の考え方
「参加・非参加」「累積・非累積」は、いずれも定款に定めることで内容が確定します。
しかし、実務上まれにこの規定が漏れてしまうケースがあります。
この場合について、文献では「規定がないときは累積・非参加と解される」とされています(『新・会社法 実務問題シリーズ 株式・種類株式』)。
つまり、優先株主は定款上の記載がなくても優先配当を満額受け取る権利を有する一方、それを超える配当には参加せず、かつ未払分は翌年度以降に累積される、というのが原則的な理解です。
実務の場では、定款上の記載漏れは基本的に起こさないよう注意すべきですが、万一のときは「累積・非参加」が基準となることを理解しておく必要があります。
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種類株式における参加・非参加、累積・非累積の仕組みと実務上の取扱いについて解説いたしました。
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