合同会社

合同会社特有の注意点とは?相続・議決権・持分管理の視点から解説

合同会社特有の注意点

近年、合同会社(LLC)の設立件数は増加傾向にあり、特に小規模事業者や資産管理法人などで多く採用されています。
設立や運営の柔軟さが魅力の合同会社ですが、一方で株式会社とは異なる特有のリスクや注意点も存在します。
本稿では、とくに相続発生時や経営継続に関わる局面に焦点を当て、合同会社ならではの法的留意点を整理します。

社員の死亡と「退社」の関係

会社法上、合同会社の社員が死亡した場合、その死亡は「法定退社事由」(会社法第607条第1項第3号)に該当します。
つまり、原則として、死亡と同時に社員資格を失うことになります。

この点、株式会社においては株式がそのまま相続人に承継されるため、株主地位は維持されますが、合同会社では社員(出資者)の地位そのものが失われる点が異なります。

持分の相続と会社の存続リスク

社員が死亡すると、その持分(出資に対応する金銭的権利)は相続人に承継されますが、相続人がそのまま「社員」となるわけではありません。この点は非常に誤解されやすいポイントです。

内容 相続される? 解説
出資持分(財産的権利) 相続される 金銭請求権などは民法上の財産として承継対象
社員の地位(経営参加権) 原則、相続されない 定款や他の社員の同意が必要(会社法605条)

また、亡くなった社員が唯一の社員であった場合には、社員が全員欠けたことになり、会社は当然に解散することになります(会社法第641条第1項第4号)。
これは合同会社特有の重大なリスクであり、予期せぬタイミングで会社が法的に終了してしまう可能性があるため、注意が必要です。

定款による対策:社員の地位の承継を認める

会社を将来にわたって存続させるには、定款で「相続人が社員の地位を承継できる」旨を明記しておくことが有効です(会社法第608条第1項)。
このような定めがあれば、社員死亡後も相続人が社員として承継し、会社の解散を回避できます。

ただし、相続人が複数いる場合は、持分が共有状態となるため、遺産分割協議が整わない限り、事業の意思決定が機能不全に陥るおそれもあります。事前に遺言書を作成し、承継者を特定しておくことも有効な手段です。

社員数・議決権設計の注意点

合同会社では、定款に特別な定めがない限り、「出資比率に関係なく、一人一議決権」が原則です(会社法第676条第2項)。
そのため、たとえば事業承継のために子どもを社員に加えたとしても、議決権の構成によっては意思決定が分裂し、経営に支障をきたすおそれがあります。

これを防ぐためには、定款で出資比率に応じた議決権構成や、特定社員の同意を必要とする事項の明記など、経営安定性を確保する工夫が必要です。

剰余金の配当と内部留保の柔軟性

合同会社では、剰余金の配当原資は「利益」に限定されており、株式会社のように資本剰余金からの配当はできません。
ただし、利益の分配については社員間で柔軟に取り決めることが可能であり、「すべてを内部留保」「特定社員に偏った配当」なども定款や合意で設定できます。
たとえば、「利益は全額内部留保し、当面は配当を行わない」という運営方針も、社員全員が同意すれば合法的に可能です。

合同会社は「柔軟さ」の裏に「設計リスク」あり

合同会社は自由度が高く、スモールビジネスに最適な会社形態です。しかし、設立時の定款設計や相続対策を怠ると、将来の重大なトラブルに直結します。

・相続による社員の欠落
・意思決定の機能不全
・配分・議決権の混乱

といった事態を避けるためにも、定款の定期的な見直しや事業承継・相続設計の事前準備を強くおすすめします。

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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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