期間計算

【期間計算シリーズ第5弾】期間満了日が休日だったら? 民法142条の射程と「過去に遡る期間」の実務判断

期間満了日が休日だった場合

「満了日が日曜日だったら、翌営業日まで延びるんですよね?」
登記や再編スケジュールで“よく聞かれる”この質問。
実はこれ、すべての期間計算にそのまま当てはめてはいけません。

なぜなら、民法142条の適用範囲には明確な限界があるからです。
今回は、満了日が休日にあたる場合の取り扱いを、

・将来に向かう期間(例:登記申請)
・過去に遡る期間(例:招集通知の発送期限)

に分けて整理します。

民法142条とは?

【民法第142条】
期間の末日が日曜日、国民の祝日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

➤ ポイント
・あくまでも「末日(=満了日)」に限定
“将来に向かう期間”を前提とした規定

適用されるケース①:登記申請など将来方向の期間

例:取締役の就任登記申請(会社法915条)
・期限:就任日から2週間以内に申請
・就任日:令和7年11月27日(木)
・起算日(初日不算入):11月28日(金)
・満了日:12月11日(木)

もし12月11日が日曜・祝日だった場合
→ 翌営業日(例:12月12日月曜)までに申請すればOK
これは、将来に向かう「2週間以内」の期限だからです。

適用されないケース①:逆算する“過去方向”の期限

例:株主総会の招集通知の発送期限(会社法299条)
・期限:株主総会の1週間前までに通知を“発する”
・株主総会:令和7年11月27日(木)
・起算日:11月26日(水)
・満了日:11月19日(火)

もし満了日(11月19日)が日曜だったら?
→ 延びません!むしろ前倒し(=11月18日土曜以前に通知)

これは、将来へ向かう期間ではなく、“逆算によって定められる期限”だからです。

▼ 民法142条の「翌日に延長」は“過去を起点にする期間”には適用されません。

適用されないケース②:「●日前までに通知」など

会社法785条3項などには、

「効力発生日の20日前までに通知をしなければならない」という規定があります。

この場合、
通知期限=効力発生日の“21日前”の終わり(=21日前24時まで)

もしこの21日前が休日だった場合でも、民法142条は適用されません。
→ 延長されない=“繰り上げ”が必要

例外的に適用されるケース③:登記の“登記所の休日”

登記申請期限では、法務局が休みの場合、登記研究の実務解釈で以下のように整理されています。

▼ 登記申請が「登記所の閉庁日」に当たる場合
→ 翌開庁日まで申請可(例:日曜→月曜申請でOK)

これは民法142条の直接適用というよりも、

・行政手続における「実行可能性」
・法務局閉庁による物理的不能

を理由とした“解釈上の救済”です。

休日と満了日の関係は“方向”で整理

方向 対象 休日延長される?
将来方向 登記申請・訴訟提起など 〇 延長される(民法142条)
過去方向 招集通知・公告・通知期限など × 延長されない(前倒し必要)
登記期限(閉庁日) 登記所が休み 〇 翌開庁日でOK(慣行)

期間満了日が休日に当たる場合、

・一律「延びる」と思い込まないこと
・その期間が“未来に向かっているか”を必ず確認すること

が重要です。次回(第6弾)は、「基準日が休日だった場合どうするか?」
議決権確定や基準日公告との関係を掘り下げます。

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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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