期間計算

【期間計算シリーズ第4弾】「前日まで」「●日前から」の真実とズレが生む実務リスクを徹底検証

特定日を起点とする逆算ルール

「株主総会の承認は、効力発生日の前日までに必要です」
「株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から可能です」

会社法にはこのような「特定日を起点とする逆算ルール」が多数存在します。
一見わかりやすいように見えて、実は民法との整合性や実務解釈においてグレーゾーンが多数潜んでいます。

本稿では、以下の3つの軸で、「前日まで」「●日前から」の期間計算を整理します。

「前日までに」の意味を正確に理解する

「前日まで」と聞くと、無意識に「前日中に完了すればOK」と思いがちですが……

表現 民法上の扱い 実務上の意味
○日前までに 満了日は○日前の“前日” ○日前の日は含まれない(=前々日まで)
前日までに 前日を含む 前日の終わり(=24時)までに完了すればOK

つまり、「20日前までに通知」→19日前の24時までに完了が必要。
一方で「前日までに承認」→前日24時までOK。

これらを混同すると、期限切れによる手続無効リスクに直結します。

「●日前の日から」と「●日前から」は同じ意味?

たとえば、会社法でよく見られる以下の表現

「効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで」

この「20日前の日から」の“意味”をどうとるかが問題になります。

表現 民法の理解 実務解釈
○日前の日から その日を含めて開始(初日算入) ✔ 午前0時から開始可
○日前から 「日」と明示されないが同義とみる ✔ 実務上は“日”ありと同様に扱う

多くの実務家は、両者を「同義」とみなしており、実質的な違いはありません。
しかし、文言が異なる以上、将来的に“解釈のブレ”が争点になる可能性は否定できません。

通知と請求期間がズレる? ~到達主義と発信主義の差~

期間計算をさらに複雑にしているのが、通知を「いつまでに発すればよいか」(通知期限)と、その通知に基づき開始される「請求可能期間」(請求期間)が、必ずしも“同じ日”に始まらない点です。

例:反対株主の株式買取請求(会社法785条)
通知期限:効力発生日の20日前“まで”に通知(=19日前24時までに株主へ到達)
請求期間:効力発生日の20日前“の日から”開始(=20日前午前0時~)

つまり、通知が20日前当日に到着しても“手遅れ”になる可能性があるのです。

このようなズレを避けるためには、
・実務上は「通知期限を1日前倒し」しておく(=21日前までに発送)
・異議申述期間や公告等も“+α”で前倒し設定する

などの工夫が必要です。

会社法の「逆算スケジュール」は慎重に

「前日まで」「●日前から」「までに通知」などの文言は、直感ではわかりやすいようで、実は民法の原則や実務慣行を踏まえて慎重に解釈すべき表現です。

表現 算入/不算入 実務ポイント
「○日前までに」 ○日前は含まない =前々日までに通知必要
「前日までに」 前日を含む 前日中に完了でOK
「○日前の日から」 初日算入 その日午前0時から請求可

次回(第5弾)では、「期間満了日が休日の場合にどうなるか?」
──民法142条の適用範囲と、過去に遡る期間における扱いを中心に検証します。

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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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