種類株式

種類株式発行会社が既存の種類株式を追加発行する際の手続きと登記

種類株式の発行

種類株式発行会社が、既に発行している種類株式を追加で発行する場合、
例えば、「A種優先株式」をすでに発行している会社が、新たにA種優先株式を追加発行する場合、どのような手続きを行うべきか登記の流れを詳しく解説します。

既存の種類株式を追加発行する際の基本的な考え方

種類株式の追加発行とは?
会社法では、株式会社は普通株式だけでなく、配当や議決権などの権利内容が異なる種類株式を発行できると規定されています(会社法108条1項)。
例えば、すでに発行しているA種優先株式 を追加で発行する場合、基本的な流れは新たに募集株式を発行する手続きと同様ですが、既存の種類株式株主の権利に影響を与える可能性があるため、特別な注意が必要 です。

既存の種類株式を追加発行する際の手続き

種類株式を追加発行する場合、以下の手続きを進める必要があります。

手続きの流れ(取締役会設置会社・非公開会社を前提)

1.取締役会の決議(募集株式の発行を決定)
2.株主総会および種類株主総会の招集
3.株主総会および種類株主総会の決議(必要な場合)
4.募集事項の通知
5.引受けの申込み
6.取締役会の決議(割当決議)
7.割当ての通知
8.払込手続き(出資の履行)
9.登記申請

以下、それぞれのステップについて詳しく説明します。

① 取締役会の決議(募集株式の発行を決定)

会社が種類株式を追加発行するには、まず取締役会で募集株式の発行に関する基本事項を決定する必要があります(会社法201条)。
取締役会で決議する内容は以下のとおりです。

・ 募集株式の種類(例:A種優先株式)
・ 発行株数
・ 払込金額または算定方法
・ 払込期日
・ 資本金・資本準備金への計上額


② 株主総会および種類株主総会の招集

取締役会の決議に基づき、株主総会および種類株主総会の招集通知 を発送します(会社法299条)。
種類株主総会の要否については、以下の点を考慮する必要があります。

【種類株主総会が必要となるケース(会社法322条)】
追加発行により既存の種類株主の権利が害される場合(議決権割合の低下、配当の影響など)。
定款で種類株主総会の決議を要すると定めている場合。

【種類株主総会が不要なケース】
定款に「当該種類株主総会の決議を要しない」旨の規定がある場合(会社法199条4項)。

③ 株主総会および種類株主総会の決議

募集株式の発行には、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成) が必要です(会社法199条)。
また、種類株主総会も必要な場合は、当該種類株主の過半数の賛成 で承認を得ることになります(会社法322条)。

決議の具体的な内容
・募集株式の種類と発行株数(例:A種優先株式 1,000株)
・払込金額(例:1株50,000円)
・払込期日(例:2025年3月31日)
・増加する資本金および資本準備金の額


④ 募集事項の通知

株主総会および種類株主総会の決議後、株式を引き受ける者に対して「募集事項通知」を行います(会社法203条)。

⑤ 引受けの申込み

株式を引き受ける者は、以下の情報を記載した申込書 を提出します(会社法203条2項)。

・ 申込者の氏名・住所
・ 引き受ける株式の数

⑥ 取締役会の決議(割当決議)

取締役会にて、誰に何株を割り当てるかを決定 します(会社法204条)。

⑦ 割当ての通知

引受人に対して割当通知を送付 します。
払込期日の前日までに通知する必要があります(会社法204条4項)。

⑧ 払込手続き(出資の履行)

引受人は払込期日までに、発行会社の指定口座に払込金を入金 します(会社法208条)。

⑨ 登記申請

募集株式の発行が完了したら、法務局に登記申請 を行います(会社法915条)。
登記申請は、増資の効力発生日から2週間以内 に行う必要があります。

登記申請に必要な書類

・株主総会議事録および種類株主総会議事録
・ 株主リスト
・ 取締役会議事録
・ 株式申込証
・ 払込証明書(通帳写しなど)
・ 資本金計上証明書


手続きのご依頼・ご相談

本日は、種類株式発行会社が既存の種類株式を追加発行する際の手続きと登記について解説しました。

まとめは以下のとおりです。
・ 種類株式を追加発行する際は、株主総会および種類株主総会の決議が必要になる場合がある。
・ 定款の規定によっては、種類株主総会を省略できる場合もある。
・ 発行手続きには、取締役会の決議、募集株式の引受け、払込、登記申請が含まれる。
・ 登記申請は増資の効力発生日から2週間以内に行う必要がある。

会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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