登記できる漢字、できない漢字とは?基準と実務上の注意点を解説
登記で使用可能な字
登記申請を行う際、「この漢字が使えるのか?」と疑問に思ったことはありませんか。
会社名や不動産名、人名に使用する漢字には、法務局での独自のルールが存在します。
普段使用している漢字がそのまま登記簿に記載されないこともあり、事前に確認を怠ると修正や手続きの遅延につながる場合があります。
本コラムでは、「正字」「俗字」「誤字」の違いから、登記実務での注意点、スムーズに手続きを進めるためのポイントまでを徹底解説します。
登記で使用できる漢字の種類と基準
登記に使用できる漢字は、大きく3種類に分類されます。
1. 正字
定義: 常用漢字表や人名用漢字表に記載されている「正しい」とされる漢字。
例: 「吉」「斎」「高」など。
登記での扱い: 原則として登記簿上の表記はこの正字で記載されます。
2. 俗字
定義: 社会的に便宜上使用される簡略化された漢字。日常生活で広く使われることも多い。
例: 「𠮷」(吉の士が土)、「髙」(高の異体字)。
登記での扱い: 法務局によっては俗字のまま登記できる場合もありますが、正字に置き換えられる場合があります。
3. 誤字
定義: 正字にも俗字にも該当せず、誤って記載された文字や変換ミスで生じた文字。
例: 誤変換や手書きでの間違いで生じる文字。
登記での扱い: 使用できません。誤った記載のまま登記が完了してしまった場合は更生登記が必要になります。
登記での注意点
1. 俗字と正字の違い
戸籍や住民票で使用されている俗字が、登記簿では正字に置き換えられることがあります。
例えば、「𠮷」が「吉」に変換されるのは典型的な例です。これにより、印鑑証明書などの表記と登記簿の表記が一致しないケースが発生することがあります。
2. 同音異字に注意
正字には同じ音を持つ異なる漢字が複数存在します。例えば、「斎藤」と「斉藤」はどちらも正字として認められますが、登記簿上が「斎藤」、印鑑証明書が「斉藤」と記載されている場合、第三者(例えば取引相手や公証人)から見て同一人物である証明ができないことが問題になります。この場合、更正登記を行い同じ表記に修正する必要があります。特に不動産取引や商業登記の際に、登記簿の表記と提出書類の表記を一致させることが求められることがあります。
3. 法務局の独自基準
法務局では、市役所や住民票の取り扱いと異なり、独自のルールで漢字を処理します。そのため、戸籍表記がそのまま登記簿に反映されない場合があります。
具体例:登記できる?できない?よくあるケース
ケース1: 異体字を使いたい
例: 「髙橋」の「髙」を使用したい場合。
対応: 法務局によって対応が異なります。正字である「高」に置き換えられる場合もあるため、事前確認が必要です。
ケース2: 法定表記と実際の表記が異なる
例: 戸籍では「𠮷田」、住民票では「吉田」と表記が異なる。
対応: 登記簿では正字「吉田」と記載されます。この場合、印鑑証明書の表記との整合性が重要です。
ケース3: 誤字の使用
例: 書類作成時の変換ミスで、誤った漢字を使用してしまった。
対応: 誤字はそもそも認められないため、正字で再提出する必要があります。
選択肢がある場合:登記における漢字の自由度
俗字と正字の変換
例: 「𠮷田(俗字)」を「吉田(正字)」に変更する。
登記簿に記載された文字を変更したい場合、通常は更正登記が必要で、登録免許税(2万円)がかかります。
ただし、重任登記(役員の再任)時に変更を申し出ると無料で変更可能です。
旧字と新字の変換
旧字(例:「﨑」)から新字(例:「崎」)への変換は可能ですが、漢字によっては、法務局のシステムで対応できない場合もあります。事前に法務局に確認しましょう。
注意すべきよくある漢字例
「高」: 「髙(俗字)」と「高(正字)」が混在する場合があります。
「吉」: 「𠮷(俗字)」と「吉(正字)」。
「崎」: 「﨑(旧字)」と「崎(正字)」。
「隆」: 旧字が登録されているケースがあります。
登記をスムーズに進めるための3つのポイント
1. 漢字の確認を事前に行う
提出前に使用する漢字が正字か俗字かを必ず確認しましょう。特殊な漢字や旧字、俗字、曖昧な場合は使用したい漢字が登記可能か事前に確認するのが最善です。
2. 必要書類との整合性を確認
印鑑証明書、住民票、登記簿などで表記が一致するかを事前にチェックしてください。不一致がある場合は、更正登記が必要になることがあります。
3. 専門家に相談する
登記の専門家(司法書士)に依頼することで、正確かつスムーズに手続きを進められます。
手続きのご依頼・ご相談
登記に使用できる漢字には、正字が原則認められ、俗字や誤字には一定の制限があります。
法務局では独自の基準に基づくため、市役所や戸籍表記と一致しない場合もあります。登記がスムーズに進むよう、事前確認と専門家への相談を欠かさないことが重要です。
会社・法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。