属人的株式と種類株式の違いとは?それぞれの特徴を簡単に解説
属人的株式と種類株式の違いとは?それぞれの特徴を簡単に解説
普通株式と種類株式
株式には普通株式だけでなく、属人的株式や種類株式などの特殊な株式があります。
普通株式の場合、各株式の権利内容は同一かつ平等な内容となっていますが、属人的株式や種類株式の場合、剰余金の配当や残余財産の分配、議決権などについて、普通株式とは異なる権利内容となっています。
それぞれの特徴を理解しておくことは、事業承継や会社経営をスムーズに進めるうえで極めて重要です。
このコラムでは、属人的株式や種類株式の基本的な事項および両株式の違いについて、簡単に解説していきます。
属人的株式とは
属人的株式とは、以下の3つの権利につき、株主ごとに異なる内容を設定できる株式のことです。
・残余財産の分配を受ける権利
・株主総会における議決権
属人的株式を設定できるのは非公開会社に限られ、定款にさえ定めていれば登記をせずに設定できます。
つまり、第三者からみて、属人的株式が設定されているのを把握するのは難しいといえるでしょう。
柔軟な設計ができるため、円滑な事業承継を進める際に利用されることが多いですが、特定の株主に対してほかの株主と異なる取り扱いをすることになるので、会社と当該株主との関係が悪化した場合には、会社経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、属人的株式を設定した株主が死亡した場合、その株式は普通株式になることも頭に入れておく必要があります。
なお、剰余金の配当や残余財産分配権をゼロにするという属人的株式を設定することはできません。
種類株式とは
種類株式とは、普通株式とは権利の内容が異なる株式のことを指します。
会社法で認められている種類株式は、次の9つです。
・残余財産の分配(会社法108条1項2号)
・議決権の制限(会社法108条1項3号)
・譲渡制限(会社法108条1項4号)
・取得請求権(会社法108条1項5号)
・取得条項(会社法108条1項6号)
・全部取得条項(会社法108条1項7号)
・拒否権(会社法108条1項8号)
・役員選任権(会社法108条1項9号)
種類株式を有効活用することで、投資家が投資するインセンティブを向上させることができるので、柔軟に資金調達できるというメリットがあります。
また、経営の自由度が上がり、多角的な経営ができるのも、種類株式のメリットの1つです。
一方で、種類株式の種類と発行数が多くなればなるほど、管理に手間がかかります。また、株式の売買を通じたキャピタルゲインを得たいと考える投資家からすれば、剰余金の配当や残余財産の分配について優先権を得たとしても、そこまで大きなメリットにはならない可能性もあります。
属人的株式と種類株式の違い
属人株式は「株主ごと」に異なる内容を設定できる株式ですが、種類株式は「株式ごと」に異なる内容を設定できる株式です。
たとえば、株式譲渡や相続などで株式が第三者に移転した場合、「株主」に着目する属人的株式は効力を失います。
一方、種類株式はあくまでも「株式」そのものに着目するものなので、第三者に移転しても効力は継続します。
また、属人的株式で異なる取り扱いができるのは3種類に留まりますが、種類株式の場合は、前述のように9種類にも及びます。
さらに、定款にさえ定められていれば登記されない属人的株式と異なり、種類株式の場合には登記される点も異なる点の1つです。
手続きのご依頼・ご相談
属人的株式は「株主」、種類株式は「株式」に着目して異なる取り扱いをする内容の株式です。
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