商業登記規則６１条の比較（取締役会非設置会社の場合）
商業登記規則61条4・6・7・8項の比較（取締役会非設置会社の場合）
商業登記規則６１条の論点
この記事では、商業登記における添付書面の中でも、特に代表的な条文である商業登記規則61条について解説していきます。
取締役の就任承諾書に押印した印鑑について証明
取締役会非設置会社においては、取締役の就任登記において添付する取締役の就任承諾書には実印を押印し、押印された被選任者の印鑑につき市区町村長の作成した証明書の添付が必要となります。
設立時取締役にも適用があり、合併及び組織変更による設立の場合は添付が不要とされています。
設立（合併及び組織変更による設立を除く。）の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
取締役の就任（再任を除く。）による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。
これは、なりすましや架空の役員が就任するのを防止する趣旨です。従って再任の場合は、実印の押印＋印鑑登録証明書の添付は不要となります。
なお、新たに選任された取締役が、当該株主総会において席上就任を承諾し、かつその株主総会議事録に当該取締役個人の実印されてい押印されている場合には、株主総会議事録を就任承諾書として援用することができます。
代表取締役選定時の取締役等の印鑑登録証明書
商業登記規則61条6項は、次のように規定されています。
ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役または代表執行役（取締役を兼ねる者に限る。）が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
① 株主総会または種類株主総会の決議によって代表取締役を定めた場合
→議長および出席した取締役が株主総会または種類株主総会の議事録に押印した印鑑
② 取締役の互選によって代表取締役を定めた場合
→取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
※3号は、取締役会設置会社の場合の規定なので、取締役会非設置会社の場合には適用されません。
この規定は、議事録等を偽造されることで、第三者に会社を乗っ取られることを防ぐための規定です。
そのため、すでに代表取締役等が登記所に提出している印鑑（登記所届出印）が押印されているのであれば、その印鑑によって代表取締役や代表執行役の意思確認ができるため、実印を押印し印鑑証明書を添付して提出する必要はないことになります。
本人確認証明書（商業登記規則61条7項）
商業登記規則61条7項では、次のように規定されています。
ただし、登記の申請書に第2項（第3項において読み替えて適用される場合を含む。）または前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
商業登記規則61条第7項は、本人確認に関する証明書の添付について記載されています。
添付される本人確認証明書としては、住民票の写しや戸籍の附票などが多いです。
ただし書によると、設立の登記もしくは役員変更の登記において、就任承諾に対する印鑑証明書を添付しない場合には、本人確認証明書の添付が必要になることになります。
代表取締役等の辞任時の印鑑証明書（商業登記規則61条8項）
商業登記規則61条8項では、次のように規定されています。
ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑が同一であるときは、この限りでない。
商業登記規則第61条8項は、申請書の偽造により、本人も知らないうちに勝手に退職させられることを防ぐために、申請書に対する印鑑証明書の添付を必要とする規定です。
辞任する代表取締役等が登記所に提出している印鑑（登記所届出印）を押印するのであれば、その印鑑によって代表取締役や代表執行役の意思確認ができるため、辞任届出に法人実印（届出印）を押印した場合は、個人実印押印＋印鑑証明書添付を省略することができます。
手続きのご依頼・ご相談
この記事では、商業登記における添付書面の中でも、特に代表的な条文である商業登記規則61条について解説しました。
会社法人登記に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。
