合併(M&A)と独占禁止法
合併(M&A)と独占禁止法
契約を締結する前からできること
独占禁止法の直接目的は公正かつ自由な競争の促進であり、究極目的は一般消費者の利益の確保、国民経済の民主的で健全な発達であるとされています。その現実的手段は、私的自治の禁止、不当な取引制限の禁止、不正な取引方法の禁止の三つです。
独禁法においては企業結合規制が置かれています。企業結合規制の行為的要件は、合併、株式保有、共同株式移転、事業譲受、共同新設分割・吸収分割、役員兼任となります。これらの行為による効果が、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、または、不公正な取引方法による場合は規制の対象となってしまいます。
例えば、吸収合併であれば、合併を行う上での経済的メリットの一つとして、市場占拠率の拡大があげられます。しかし、存続会社が消滅会社を承継した後の市場の占拠率が高くなり過ぎてしまう場合、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなり、独禁法の定めに該当する企業結合と判断されてしまいます。したがって、市場規模の大きな会社が合併する場合、合併の効力が発生する前に、公正取引委員会に届出をする必要があります。事前届出制度の目安は以下の通りです。
・全部+重要部分 売上高合計200億円超+対象部分売上高30億円超
・重要部分+全部 対象部分売上高100億円超+売上高合計50億円超
・重要部分+重要部分 対象部分売上100億円超+対象部分売上高30億円超
規制の対象となるかは、市場シェア及び従来の競争の状況、共同出資会社の扱い、競争者の市場シェアとの格差、競争者の供給余力及び差別化の程度、輸入に係る輸送費用の程度の流通上の問題の有無、参入者の商品と当時会社の商品の代替性の程度、取引先変更の容易性などの要素から判断されます。
基本情報の調査
独禁法に抵触した場合、企業結合自体を行えない場合があります。また、第一次審査・第二次審査の通過があり、企業結合実行の禁止期間があります。企業結合が長期化するリスクを考えると、企業結合の契約を締結する前に、合併後の市場規模が一定規模を超え事前届出を要するか否かを当事会社の基本情報から調査しなければなりません。したがって、まずは専門家に調査を依頼し、登記申請までの長期的なスケジュールの策定を行うことをお勧めします。
事前届出を怠った場合、公正取引委員会によって合併無効の訴えが提起される場合があります。また、200万円以下の罰金が科される場合があります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は合併と独占禁止法について解説しました。
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