英文契約書によく出てくる「仲裁」とは何か。日本の裁判所としない理由など。英文契約書作成・リーガルチェック
英文契約書によく出てくる仲裁とは何か
日本で作成する契約書には、万が一、取引相手と紛争が生じた場合どこの裁判所で裁判を行うのかについて定めることが一般的となっています。
契約書によって合意した裁判所管轄を「合意管轄」と呼びます。
一般的には下記のように定められます。
本契約及び本契約に関連する個別契約について訴訟の必要が生じた場合には、訴額に応じ、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
英文契約書の場合
英文契約書には、下記のような仲裁規定が置かれていることが一般的です。
to this Agreement, the same shall be referred to arbitration. The arbitration
shall take place in Japan, and the arbitration shall be conducted according to
the International Chamber of Commerce (ICC) Conciliation and Arbitration
Rules for the time being in force. The tribunal shall consist of one arbitrator to
be appointed in accordance with the ICC Conciliation and Arbitration Rules.
本契約に関してライセンサーとライセンシーの間に相違点が生じた場合、それは仲裁に付されるものとする。仲裁は日本で行われるものとし、仲裁は国際商業会議所(ICC)の調停および現に有効な仲裁規則に従って行われるものとする。仲裁廷は、国際商業会議所(ICC)の調停および仲裁規則に従って任命される1人の仲裁人で構成されるものとする。
仲裁の言語は日本語(英語)でなければならない。両当事者は、本契約により、仲裁人がそのようなすべての紛争を解決する際に、本契約の全ての条件および条項に完全な効力を与えなければならないということが両当事者の意図であることに同意する。仲裁裁定は最終的なものであり、両当事者を拘束するものとする。両当事者は、それに応じて、その条件を履行するものとする。
仲裁費用は、敗訴した当事者が負担するものとする。上記にかかわらず、各当事者は、選択した裁判所で、本契約の条件を施行するために、相手方に対する差止命令などの臨時の法的措置を直ちに開始する権利を留保する。
これは、紛争が生じた場合の紛争解決機関を国際商工会議所とする規定です。
対外国との紛争は上記規定を置くのが一般的となります。対外国との紛争解決方法は「仲裁手続」によることが一般的となるためです。
なお、この仲裁手続を行うためには細かく上記のように契約において定めることが求められます。
翻訳の際に注意するべきことは、ここを日本の裁判所と変更してしまうことです。
日本の裁判所では「仲裁手続」は行うことができないため、万が一紛争が生じた場合に日本の裁判所で判決をとったとしても、国内では有効ですが当該判決は外国においてその効力を有しません。まったく無意味な条文となってしまいますので注意が必要です。
紛争解決機関はICC又は仲裁機関を選択する
上述のとおり、日本の裁判所を紛争解決機関とすることにはリスクがあるため、対外国との契約書に記載する紛争解決機関は、ICCにするか、他の仲裁機関を選択する必要があります。
日本にある仲裁機関では、一般社団法人日本商事仲裁協会(英語名:The Japan Commercial Arbitration Association)があります。
さいごに
いかがでしたでしょうか。本日は対外国人・外国法人との契約において注意すべき契約書条項の一部を解説させていただきました。
永田町司法書士事務所では対外国との契約書の作成・翻訳・チェック(渉外業務など)の実績を豊富に有しています。
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