不動産登記

特別委任方式による登記原因証明情報とは?フルオンライン申請時代に向けた実務整理

特別委任方式による登記原因証明情報

令和8年3月1日から、「特別委任方式による登記原因証明情報」の運用が始まります。
これは、司法書士が登記義務者から特別の委任を受けて作成した登記原因証明情報について、一定の要件を満たせば、登記義務者本人の電子署名がなくても適式と扱うという新しい運用です。

本コラムでは、
・なぜこの制度が導入されたのか
・従来実務と何が変わるのか
・実務で注意すべきポイントはどこか
を、実務目線で整理します。

なぜ「特別委任方式」が導入されたのか

背景にあるのは、フルオンライン申請の現実的な壁です。

報告形式の登記原因証明情報を電磁的記録で作成する場合、従来は
「登記原因発生後に、登記義務者本人が電子署名を行う」ことが前提でした。

しかし、不動産取引の実務では、
・代金決済後に改めて電子署名を求めるのが難しい
・決済現場で電子署名環境が整っていない

といった事情があり、オンライン完結を阻む要因になっていました。

この実務上の課題に対する調整として、
「司法書士が特別の委任を受け、登記原因を相当な方法で確認した上で作成する場合には、登記義務者の電子署名がなくてもよい」
という整理がなされた、という位置づけです。

従来の実務は否定されるのか?

結論から言えば、否定されません。

あくまで、
・フルオンライン申請を進めるための選択肢を広げた
・一定の場合に限り、例外的な取扱いを認めた
という整理です。

従来どおり、
・登記義務者が作成した紙の登記原因証明情報
・電子署名付きの登記原因証明情報
を用いる実務も、引き続き有効です。

特別委任方式が使える登記は限定されている

特別委任方式は、すべての登記で使えるわけではありません。
対象となる登記の目的は、次のものに限定されています。

登記の目的 内容
所有権移転 売買・贈与(共有持分を含む)
担保権関係 抵当権・根抵当権の設定、抹消

これ以外の登記については、特別委任方式は採用できません。
この点は、実務での取り違えが起きやすい部分です。

特別委任方式が成立するための実務要件

実務上、特に重要なのは次のポイントです。

要件整理(実務向け要約)

観点 実務上のポイント
委任の内容 「登記原因証明情報を司法書士が作成すること」まで具体的に特定されている必要がある
確認方法 契約立会い、決済立会い、登記義務者からの聴取など「相当な方法」であること
作成者と申請者 登記原因確認から登記申請まで、同一の司法書士等が関与することが原則
電子署名 登記原因証明情報には、司法書士等の電子署名が必要
申請情報 「特別委任方式」である旨を申請情報に明示する必要がある
登録免許税 原則として電子納付

「委任がある」「確認した」だけでは足りず、
その中身がどこまで具体化されているかが実務上の肝になります。

委任状作成で注意すべき実務ポイント

委任状(委任情報)について特に重要な点は下記のとおりです。
・「登記申請に関する一切の件」だけでは足りない
・登記原因となる予定の事実・法律行為が具体的に特定されている必要がある
・作成時期は、原則として登記原因発生日の1か月以内が望ましい

また、実務上は、
・委任状本文は定型化
・登記原因証明情報(案)を別紙として合綴
といった運用も検討に値するとおもいます。

電子署名のタイミングには注意が必要

実務感覚として「事前準備をしておきたい」という発想は自然ですが、
電子署名の付与時期について慎重な考え方が必要とかんがえます。

特に、
・所有権留保付き売買
・代金決済をもって権利変動が確定する取引

では、登記原因が成立する前に電子署名を付すことは適切ではない
と考えられますが、今後の運用をみて判断していく流れになろうかとおもいます。

オンライン申請特有のリスク管理

また、制度論だけでなく実務リスクに触れるとすると、特別委任方式で作成した電磁的記録は、書面申請に転用できません。
そのため、
・通信障害
・事務所PCの故障
・オンライン申請が不能になるケース
は、十分に注意が必要です。
実際は、念のため、紙の登記原因証明情報も併せて確保しておくという対応も、現場レベルでは十分検討に値します。

本コラムのまとめ

特別委任方式は、フルオンライン申請を前進させるための実務調整ルールです。
便利な一方で、
・使える登記が限定されている
・委任内容と確認方法の具体性が強く求められる
・リスク管理を誤ると切り替えが効かない
という側面もあります。

今後、運用されていくにあたり、実務上の取扱いも明確になりますので、また改めて更新いたします。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、特別委任方式による登記原因証明情報とは?フルオンライン申請時代に向けた実務整理について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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