株式

株式会社における自己株式の消却、手続の全体像と登記実務で押さえるべきポイント

自己株式の消却

株式会社は、自らが保有する株式、いわゆる自己株式を消却することができます。
自己株式の消却は、発行済株式の総数を減少させる行為であり、
資本政策や株主構成の整理の場面で実務上よく用いられます。

もっとも、
・どの株式を消却できるのか
・誰が、どのような決定をするのか
・いつ効力が生じ、どのような登記が必要か

といった点を曖昧にしたまま進めると、登記段階で手戻りが生じやすい手続でもあります。
本稿では、自己株式の消却について、実務上の整理を中心に解説します。


消却できるのは「自己株式」に限られる

会社が消却できる株式は、自己株式に限られます。
株主が保有している株式を直接消却することはできません。

そのため、株主の持株を消却したい場合には、
まず会社がその株式を自己株式として取得する必要があります。

なお、自己株式の取得は、
・無償取得の場合
・有償取得の場合
で整理が異なり、特に有償取得については、会社法に基づく手続きを経なければ、当事者間の合意だけで行うことはできません。

自己株式の消却を決定する機関

自己株式の消却を決定する機関は、会社の機関設計によって異なります。

取締役会設置会社
取締役会の決議により消却を決定します。

取締役会非設置会社
取締役の過半数の決定により消却を決定します。

株主総会決議は不要であり、この点は、自己株式の「取得」と異なるため、混同しないよう注意が必要です。

決議(決定)で定めるべき事項

自己株式の消却を行う場合、
決議機関において、消却する自己株式の内容を特定する必要があります。

具体的には、
・消却する自己株式の数
・種類株式発行会社であれば、株式の種類および種類ごとの数
を定めます。

また、実務上は、消却の効力発生日を併せて定めるのが一般的です。

効力発生日を定めていない場合、
登記手続において、その日を裏付ける別途の資料を求められることがあります。

消却の効力発生日の考え方

自己株式の消却の効力は、
株主名簿から当該自己株式の記載・記録が抹消された時点で生じます。

・株券発行会社の場合
株券の破棄および株主名簿の抹消が行われた時点

・株券不発行会社の場合
株主名簿の記載・記録が抹消された時点

もっとも、実務では、
この効力発生日をあらかじめ決議(決定)で明示しておくことが多く、
非上場会社では、決議日と同日とするケースがよく見られます。

条件付きで消却を決定する方法

自己株式の取得と消却を連続して行う場合、
取得を条件として、あらかじめ消却を決定しておく方法も実務上よく用いられます。

たとえば、
・将来、特定の日に自己株式を取得することを条件として
・取得後、一定の日に消却する
といった形です。

取締役会の開催頻度が限られる会社では、
このような条件付きの整理が有効な場面もあります。

自己株式の消却と登記

自己株式を消却すると、発行済株式の総数が減少します。
そのため、発行済株式の総数の変更登記が必要になります。

登記申請は、消却の効力発生日から2週間以内に行います。

なお、自己株式を消却しても、資本金の額は自動的に減少しません。
資本金の額を減少させたい場合には、別途、減資の手続が必要です。

登記申請の添付書類と登録免許税

登記申請に際しては、会社の機関設計に応じて、次の書類が添付されます。
・取締役会議事録(取締役会設置会社)
・取締役決定書(取締役会非設置会社)
議事録等に効力発生日の記載がない場合には、
その日を証する補足資料の提出を求められることがあります。

登録免許税は、3万円です。

本コラムのまとめ

自己株式の消却は、
株主総会を要しない比較的シンプルな手続に見えますが、
・消却対象が自己株式に限られる点
・決議機関の整理
・効力発生日と登記の関係
を押さえていないと、実務でつまずきやすい分野でもあります。

特に、「いつ消却の効力が生じたのか」
を明確に説明できる構成にしておくことが、登記実務上の安定につながります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、株式会社における自己株式の消却、手続の全体像と登記実務で押さえるべきポイントについて解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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