不動産登記

不動産登記の特別委任方式とは?登記原因証明情報を資格者の電子署名で作成できる新制度が始まります。

不動産登記における「特別委任方式」

令和7年12月9日付で、法務省から不動産登記の電子申請に関する新たな運用ルールが示されました。
通達(令和7年12月9日付法務省民二第1578号)
いわゆる「特別委任方式」と呼ばれる仕組みです。




特別委任方式とは何か

特別委任方式とは、司法書士が、登記義務者から登記原因証明情報の作成について特別の委任を受けることにより、
登記義務者が紙に押印することなく、司法書士自身が登記原因証明情報を電磁的記録として作成し、電子署名を付して電子申請することを認める制度です。

従来のように、登記義務者が紙で登記原因証明情報を作成し実印を押印する方法に代えて、
資格者である司法書士が作成主体となる点に特徴があります。

特別委任方式の制度趣旨

この制度は、
「司法書士が登記義務者から登記原因証明情報作成について特別の委任を受け、
自ら事実確認を行ったうえで、登記原因証明情報を作成・電子署名する」
という構造を前提としています。

単に電子署名を省略できる制度ではなく、
登記原因証明情報の作成主体を、例外的に司法書士に認める制度である点が本質です。

対象となる登記の範囲は限定的

特別委任方式を利用できる登記は、次のものに限られます。

登記の種類 内容
所有権移転登記 売買・贈与によるもの(共有持分を含む)
抵当権関係 抵当権・根抵当権の設定および抹消

相続や合併などは対象外であり、あくまで典型的な契約型取引に限定された制度です。

特別委任方式の要件

特別委任方式を適用するためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
要件の全体像

区分 要件の内容
申請形態 登記権利者・義務者による共同申請
委任関係 登記義務者から司法書士への「特別の委任」が明示されていること
作成主体 登記原因証明情報は司法書士が作成
電子署名 司法書士自身の電子署名が付されていること
事実確認 契約締結や金銭授受の現認、聴取など相当な方法
申請代理 登記原因証明情報作成者と申請代理人が同一
申請情報 特別委任方式である旨の明記
登録免許税 原則として電子納付


運用開始日

特別委任方式の運用開始日は、令和8年3月1日とされています。

実務上のポイント

特別委任方式は、電子申請においても紙と押印を前提としてきた従来の実務を、
一定の取引類型に限り、資格者の電子署名によって完結させることを可能にする制度です。

もっとも、登記原因証明情報の作成を司法書士が担う以上、
委任内容や事実確認の在り方については、これまで以上に慎重な整理が求められます。

よくある質問(FAQ)

Q1.登記義務者の電子署名は完全に不要になるのですか?
A.すべての登記で不要になるわけではありません。対象登記・要件を満たす場合に限り、不要とされます。

Q2.司法書士が勝手に登記原因証明情報を作成できる制度ですか?
A.いいえ。登記義務者からの「特別の委任」が前提です。

Q3.本人確認書類の提出は不要になりますか?
A.不要になるわけではありません。事実確認の一環として引き続き重要です。

Q4.書面申請にも使えますか?
A.本制度は電子申請を前提とした取扱いです。

Q5.いつから使えますか?
A.運用開始は令和8年3月1日です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、不動産登記の特別委任方式とは?登記原因証明情報を資格者の電子署名で作成できる新制度について解説しました。
不動産登記・会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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