合同会社の代表社員が外国法人の場合に必要となる実務と表記ルール
合同会社の特徴
合同会社の運営では、代表者にあたる地位として「代表社員」が置かれます。
株式会社の代表取締役と異なり、合同会社では個人だけでなく法人も代表社員になることができる点が特徴です。
本稿では、特に外国法人が代表社員に就任する場合に焦点を当て、
職務執行者の選任・登記添付書類・宣誓供述書の扱い・外国法人名の表記ルール
といった実務上重要なポイントを整理します。
代表社員が法人の場合の基本構造
法人が代表社員に就任する場合、法人自身が業務を行うことはできないため、
代表社員たる法人が選任する「職務執行者」が実務を担当します(会社法598条)。
職務執行者とは
・法人代表社員の代わりに、合同会社の業務を実行する者
・通常は、その法人の代表者等が就任する例が多い
・ただし、法人の関係者に限る必要はなく、外部者を選任することも可能
選任手続は、
・株式会社が代表社員=取締役会決議
・合同会社が代表社員=社員の過半数同意
など、代表社員となる法人の機関決定で行う
また、職務執行者は複数名の選任も可能であり、代表社員が1法人であっても、必要に応じて複数体制を敷くことができます。
代表社員が法人の場合の登記添付書類
代表社員の就任に伴い、登記時には次の書類が求められます。
【代表社員が法人の場合に必要となる添付書類】
| 書類名 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 法人の登記事項証明書 | 代表社員となる法人の証明書。合同会社と同一管轄の場合は省略可能 |
| 職務執行者選任を証する書面 | 取締役会議事録や社員同意書など、選任決議を示す書面 |
| 職務執行者の就任承諾書 | 就任を承諾する書面。個人が就任する場合は署名押印等が必要 |
代表社員が「外国法人」の場合の実務
日本国内に登記のない外国法人が代表社員となるときは、
上記の「登記事項証明書」に代わるものとして、宣誓供述書(Affidavit)を提出する扱いが一般的です。
宣誓供述書に記載すべき内容例
・宣誓供述書では、登記申請に必要な情報を網羅させるため、一般に次の内容を含めます。
・外国法人の本店所在地
・商号
・宣誓供述者が当該外国法人の代表者であること
・合同会社における職務執行者として誰を選任したか
さらに、職務執行者が法務局に提出する代表印(合同会社の実印)を届け出る場合、
保証書の提出が要求されるところ、
宣誓供述書を「印鑑証明書に相当するサイン証明書」として使える構成にしておくのが一般的です。
外国法人が代表社員の場合の氏名・名称の表記
合同会社の商号はローマ字も使用できますが、代表社員の氏名・名称については原則としてローマ字表記が認められていません。
しかし、
・代表社員が外国法人
・または業務執行社員が外国法人
といった場合には、登記における名称表記としてアルファベット使用を認めているケースも見受けられます。
ただし、実際にアルファベット表記が認められるかどうかは、事前に管轄法務局へ確認するのが安全というのが実務の結論です。
LLC と日本の合同会社の誤解について
関連して、外国法人の関与がある場面では、
・LLCを設立した
・エルエルシーが代表社員になる
といった表現が登場します。
ただし注意すべきは、
アメリカのLLCはパススルー課税を選択できる法人形態であり、税務上の扱いが日本の合同会社と異なる点です。
日本の合同会社は、株式会社と同様に法人課税です。
名称が似ているため誤解を招きやすく、税務コミュニケーションでは明確に区別する必要があります。
本コラムのまとめ
外国法人が代表社員となる合同会社は、
通常の役員変更や設立よりも、登記実務の要件が増えるため注意が必要です。
要点を整理すると次のとおりです。
・法人が代表社員になる場合は職務執行者の選任が必須(会社法598条)
・職務執行者は複数でも良く、法人関係者以外も選任可能
・外国法人の場合、宣誓供述書で登記事項証明書を代替するのが一般的
・職務執行者が代表印提出を行うときは、宣誓供述書をサイン証明書として使う設計にする
・外国法人の名称表記は原則アルファベット使用が認められるが、管轄によって運用が異なるため要確認
・日本の合同会社はLLCと異なりパススルー課税ではない(誤解注意)
実務では、外国法人が関与する場面では
書類の準備量と確認事項が大きく増えるため、登記前のすり合わせが重要です。
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本日は、合同会社の代表社員が外国法人の場合に必要となる実務と表記ルールについて解説しました。
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