国際相続(渉外相続)とは何か?司法書士が押さえるべき基本と実務の論点
国際相続が注目されている背景
日本国内に不動産を所有する外国人が急増する中で、相続が発生した際に「国内相続」とは異なる判断・調査・書類対応が求められるケースが確実に増えています。
相続人や被相続人の国籍、居住地、財産所在地が1つでも国外にまたがると、それは「国際相続(渉外相続)」と扱われ、準拠法(どこの国の法律が適用されるか)の判断が必須となります。
渉外相続とは?定義と基本理解
以下のいずれかに該当する場合、登記実務では「渉外相続」として扱います。
・被相続人または相続人のいずれかが外国人である
・被相続人の居住地、死亡地、財産所在地のいずれかが国外である
つまり、相続関係に「外国」が1つでも絡む場合には、日本国内の相続手続きとは別のアプローチが必要です。
なぜ国際相続は「面倒」なのか?
以下のような理由で、通常の相続登記に比べて対応が複雑になります。
・準拠法(適用される国の法律)を特定する必要がある
・外国法の内容や解釈を確認しなければならない
・現地の専門家(弁護士・公証人)の協力が必要になる
・戸籍制度・住民票制度など、日本固有の書類が通用しない
特に、相続人の範囲や遺留分の有無、遺言の有効性などは国によって大きく異なります。
日本における基本ルール「通則法」の読み方
日本の渉外相続実務では、「法の適用に関する通則法(平成19年施行)」に基づき、以下のように処理されます。
| 論点 | 適用法(通則法による) |
|---|---|
| 相続全般 | 被相続人の本国法(第36条) |
| 遺言の成立・効力 | 遺言者の本国法(第37条) |
| 遺言の方式 | 「遺言の方式の準拠法に関する法律」(昭和39年法) |
例えば、アメリカ人が日本に不動産を残して死亡した場合、原則としてアメリカ法が準拠法となりますが、アメリカには州ごとの違いや、そもそも国際私法のルールが不明確という難点があります。
世界の相続法の考え方はバラバラ
渉外相続における「準拠法」の特定では、各国の制度の違いを理解する必要があります。代表的な分類は以下のとおりです。
(1)相続統一主義
→ 国籍や本国法で一律に判断する立場。
日本、韓国、ドイツなど。
(2)相続分割主義
→ 財産の種類(不動産/動産)によって適用法が異なる立場。
アメリカ、中国、イギリスなど。
実務でぶつかる3つの壁
① 本国法が不明確、または調査困難
→ 現地弁護士や公証人の協力が不可欠。調査書面や宣誓供述書の取得が必要です。
② 書類の形式が通用しない
→ 戸籍謄本の代替として出生証明書、婚姻証明書等を公証書化し、アポスティーユ等を取得する必要があります。
③ 「反致」や「ドミサイル」の論点
→ 外国法が日本法を準拠法とみなすケース(反致)や、死亡時の「居住地判断」が複雑なケース(ドミサイル)など、一筋縄では割り切れない論点が頻出します。
国際相続では「通則法+現地実務」の二段構えが必須
渉外相続においては、日本国内の相続手続きのような単線的な対応では不十分です。
・準拠法の判断(通則法)
・現地法の証明書類の整備
・法務局との事前確認・交渉
これらを調整する力が司法書士に求められる領域であり高い専門性が問われます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、国際相続(渉外相続)の実務について解説いたしました。
外国人が相続人となる不動産登記手続きや
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