法定書類

宣誓供述書(Affidavit)が電子公証されている場合の登記実務

宣誓供述書が電子の場合の対応

外国会社や外国法人が社員となる合同会社の登記において、宣誓供述書(Affidavit)はしばしば添付が求められる書類です。
しかし近年、紙の署名や押印ではなく、公証人による電子署名形式で作成されるAffidavitが増加しています。

本稿では、電子署名方式で作成されたAffidavitを登記添付書面として使用する際の実務的取扱いを整理します。

外国の電子署名文書は原則として登記所で受付不可

登記・供託オンライン申請システムで添付書面情報を送信する場合、利用可能な電子証明書は日本国内の発行主体にほぼ限定されています。
法務省民事局が示す対応一覧にも、外国の電子証明書は原則掲載されておらず、現状では外国の電子署名付き文書をそのまま登記に添付することはほぼ不可能です。

参考:法務省民事局「利用可能な電子証明書の一覧」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html#05

つまり、電子署名がなされたAffidavitをそのまま電子的に送信しても、登記官が署名の真正を確認することができず、手続上の要件を満たしません。

電子署名Affidavitのプリントアウトを添付することは可能か

電子署名されたpdfを印刷し、紙のAffidavitとして登記申請に添付できるか――。
実務上は、受理された例が存在します。

特に、Affidavit本文に「電子・紙いずれの形式でも同一の内容・検証が可能である」旨が明記され、検証用URLやID・パスワードが添付されている場合、登記官が「真正性を確認可能」と判断し、原本として取り扱われたケースが確認されています(東京法務局)。

ただし、これは個別判断の範囲内であり、全国的な統一運用とは言えません。
受理実績があっても、同様の書式が他管轄で認められるとは限らないため必ず照会をおねがいいたします。

原本性の確保と押印不要の整理

(1)押印の有無
令和3年1月29日付民商第10号通達により、登記審査上、押印を要しない書面は原則として押印の有無を審査対象としない運用となっています。
したがってAffidavitに押印がなくても、それだけで却下されることはないと考えます。

(2)原本性の判断
登記における添付書類は「原本提出」が原則です。
電子署名Affidavitを印刷しただけでは単なるコピーにすぎません。

このため、原本性を補う外部的な要素(電子署名の検証手段・URL・証明コードなど)が添付されているかが極めて重要になります。
もし電子署名の真正性を客観的に確認できる手段が付属していない場合、紙原本(手書き署名+公証スタンプ)で再取得する方が確実です。

電子公証Affidavitを扱う際の実務上の確認ポイント

確認項目 注意点
電子署名の有効性 Acrobat Reader等で電子署名が有効になっているか確認。スタンプ画像のみのものはNG。
署名日時と作成日付 書面上の日付と電子署名のタイムスタンプが整合しているか。
公証人の身分情報 公証人の氏名・登録番号・事務所情報等が確認できるか。フリーメール(gmail等)署名は要注意。
検証用情報 URL・コード・シリアル番号など、真正性を検証可能な情報が付属しているか。
官憲の認証の有無 商業登記法129条2項の要件を満たすか(本国官庁または領事認証)。

これらを自ら確認し、登記官からの照会にも説明できるよう整理しておくことが望まれます。

現行制度の課題と今後の方向性

現行制度では、日本の登記所が受理可能な電子署名は国内発行証明書に限定されており、外国電子署名文書の取扱いが制度的に想定されていません。
外資系企業が多い現代において、この点は明らかに実務負担の要因です。

今後は、電子署名の発行主体や認証方式の相互承認を進め、公証人の電子署名を伴うAffidavitも合理的に原本性を確認できる仕組みを整えることが望まれます。

【追加事例】外国法人が発起人となり株式会社を設立するケースで署名証明書(電子)を使用した事例

ベルギーの外国法人が発起人となる株式会社設立において、署名証明書が電子形式で発行された事案がありました。
※ベルギーは、電子オンリーのようです。
このケースでは、公証役場への定款認証時に、電子署名証明書をメール添付で送付したところ、特段の問題なく受理されています(紙ベースで提出していません)。
もっとも、これも公証人の判断によるもので、全国的に同様の運用がなされているわけではないといえるため各公証役場ごとの事前確認が必須です。

本コラムのまとめ

・外国電子署名付きAffidavitは、原則として登記所では受付不可。
・ただし、検証可能な情報付きであれば、印刷版が受理された実例あり。
・原本性の立証と公証人の真正確認が最大のポイント。
・不明確な場合は、紙原本(スタンプ押印形式)での取得を推奨。

外国企業との取引が増える中、電子署名文書の扱いは今後さらに実務上の焦点となる分野です。現場で判断に迷う場合は、事前に法務局担当者との照会を行い、案件ごとのリスクを慎重に評価することが重要です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、宣誓供述書(Affidavit)が電子公証されている場合の登記実務について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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