会社・法人設立

払込みを証する書面について、口座/方法/金額/払込人/タイミングの実務5論点

払込みを証する書面

今日は、払込みを証する書面でつまずきやすい5論点を、実務目線で整理します。

1.どの口座に入れるか
2.どういう方法なら足りるか
3.金額がズレたらどうするか
4.払込人は誰でもいいのか
5.タイミングはいつか

口座:設立は発起人口座・増資は会社口座が原則

設立(発起設立):新会社は未成立のため新会社名義口座は作れない。発起人の口座に払込む。
 ・例外:発起人から委任を受けた者(例:設立時代表取締役)の口座も可。授権書面の添付でカバー。
 ・外国人発起人で日本口座がない場合の回避策として実務的。
・増資:会社名義の口座へ。
・外国銀行の外国支店口座は不可。国内支店の口座を使用。
・外貨預金は可(円換算は書面側で明示)。

発起人の普段使い口座で可

方法:残高だけはNG。“お金の動き”が必要

・振込でなくてもよい。
 例①:残高1億円の口座から出金→同額入金で払込行為を作る。
 例②:振替で移す
・証憑(通帳コピー等)には以下が必要
 ① 名義 ② 口座番号 ③ 金融機関・支店 ④ 日付・金額

ネット明細は項目不足に注意。不足分は当座照合票等の別資料で間接補強。

金額:不足は不可、超過は常識の範囲で可

決議額未満は不可。
超過は可だが、扱いを決めておく。
 ・資本準備金に振り向けるなら決議で明記。
 ・「10万円の出資に1000万円払込」等は出資との関連が説明不能→避ける

払込人:名義と出資者が異なっても可(範囲は常識)

振込人名は登記の成否を左右する本質ではない。
 ・第三者名義振込でも、客観的に出資金と認められる関係であれば可。
明確に出資と無関係な入金(例:給与振込)はNG。
海外送金:通帳には送金番号のみのことがある。
 以前は海外送金明細の添付を求められたが、現在は通帳コピーのみで可の運用が一般的(※管轄確認は推奨)。

タイミング

・設立:原則は定款作成後の払込(現在は定款作成前でも可能だけど書類が増えるため定款作成日後が無難)。
・増資:募集事項決議の後。実務上は申込期間内の払込が安全。
・早すぎる入金は“その時点では出資は決まっていない”として出資金とみなされない。
 ・例:決議前に親会社から巨額の海外送金→いったん伝票処理で出金→再入金で整序した上で登記へ。

添付セットのおすすめフォーマット

払込み証明書(会社代表者の自己証明)
 ・払込総額、1株当たり払込金額、払込期日、払込口座、払込方法
通帳コピー(表紙裏+払込記載頁)/当座照合票/ネット明細+補強資料/海外送金明細(必要時)
(増資のみ)払込金の計上に関する証明書
決議議事録(設立:定款、増資:取締役会/株主総会)

まとめ(実務原則)

・口座は設立=発起人/増資=会社、方法は“動き”を作る。
・金額は不足NG・超過OK(常識&決議整備)。
・払込人は名寄せ不要だが、出資と無関係な入金は排除。
・タイミングは意思決定後が無難

手続きのご依頼・ご相談

本日は、払込みを証する書面について、口座/方法/金額/払込人/タイミングの実務5論点を解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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