組織再編

合併・分割における「認可を要しない旨の証明書」取得実務

貨物利用運送事業等を目的に含む会社の登記申請で注意すべき点

合併や会社分割の登記申請において、事業目的中に「一般貨物自動車運送事業」等の文言が含まれている場合、たとえ実際に運送事業許可を受けていなくても、法務局から「陸運局の証明書(認可を要しない旨)」の提出を求められることがあります。

これは、登記官が「事業目的に運送事業がある以上、貨物自動車運送事業法上の許認可関係を確認する必要がある」と判断するためです。
実務上は見落としが多く、登記申請後に補正で求められる典型例といえます。

法的根拠、貨物自動車運送事業法第30条第2項

貨物自動車運送事業法第30条第2項は次のように規定しています。

一般貨物自動車運送事業者たる法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
ただし、一般貨物自動車運送事業者たる法人と一般貨物自動車運送事業を経営しない法人が合併する場合で、一般貨物自動車運送事業者が存続する場合、又は同事業を承継しない場合はこの限りでない。

このため、事業目的に「貨物運送」「利用運送」等があるだけで、登記官は一律に確認を求める傾向があります。

証明書の請求先

当事会社の本店所在地を管轄する地方運輸局(陸運局)に請求します。
支局や分室では対応できない場合が多いため、必ず本局または地域を所管する運輸支局に確認する必要があります。

請求書の様式

法定様式はなく、各運輸局が任意様式を公開しています。

地方運輸局 様式リンク例
東北運輸局 https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/youshiki/unnsoujigyou/trk/trk.html
中部運輸局 https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/truck/ippan_youshiki.html

各局のフォームは「証明書請求書」「依頼書」「照会書」など名称が異なるため、該当局のサイトで最新様式を確認します。

代理取得と押印の要否

司法書士・弁護士・行政書士などの代理人による取得は可能です。
通常は委任状の提出は不要ですが、代理人名を請求書上に明記しておくと親切です。

押印についても、コロナ禍以降の押印廃止方針により不要扱いが一般化しています。
ただし、局によっては社印欄を残している場合もあり、形式上押印を求められることもあるため、事前確認が確実です。

添付書類とその範囲

登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の写しを添付します。

取引類型 添付対象
吸収合併 存続会社・消滅会社の両方
吸収分割 承継会社・分割会社の両方

「当事会社すべての登記記録を確認できる状態」が求められます。

登記事項証明書の有効性

有効期限は明示されていませんが、原則として発行後3か月以内のものが望ましいとされています。
登記申請後に法務局から証明書提出を求められた場合、直前で登記簿が統合・閉鎖されている可能性もあるため、事前に写しを保存しておくことが安全です。

郵送による請求

多くの地方運輸局では郵送請求が可能です。
返信用封筒(切手貼付)を同封し、会社名・連絡先を明記して送付します。
返信は普通郵便が一般的ですが、簡易書留を希望する場合はその旨を明記しておくと確実です。

効力発生後の請求と証明日付

合併・分割効力発生日の後に証明書を請求しても、証明書には実際の発行日が記載されます。
「効力発生日以前の日付にしてほしい」といった調整は行われません。

ただし、証明書日付が登記申請日より後になっても、法務局では通常受理されています。
これは実務上、事後的追完を想定した運用といえます。

発行までの標準処理期間

運輸局の繁忙度によりますが、概ね7日~14日程度で発行されます。
郵送請求の場合は郵送期間を含め、2週間程度を見込むのが安全です。

実務の留意点

・「貨物利用運送事業」など目的に“運送”の語を含む場合、許可有無にかかわらず証明書が必要になる可能性あり
・合併・分割登記申請書の備考欄に「貨物利用運送事業の許認可対象ではない旨」を記載しても、原則では免除されない
・証明書の取得に時間がかかる場合は、申請を先行して補正対応とすることが多い

本コラムのまとめ

論点 実務上の結論
証明書の名称 合併・分割の認可を要しない旨の証明書
請求先 本店所在地を管轄する地方運輸局
代理取得 司法書士・行政書士等でも可能
押印 原則不要(局により異なる)
添付書類 両当事会社の登記事項証明書
証明書日付 実際の発行日(効力発生日以前に遡及しない)
処理期間 約1週間
留意点 登記官補正を避けるため、事前取得が望ましい


手続きのご依頼・ご相談

本日は、合併・分割における「認可を要しない旨の証明書」取得実務について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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