合併登記「目的上事業者」問題、何を証明する?ないこと証明の最短ルート
目的上事業者
合併の消滅会社の目的に、許認可が必要な運輸関連の文言が入っている。
この瞬間に立ち上がるのが、いわゆる「目的上事業者」の論点です。
実際に事業をやっていなくても、目的として掲げているだけで、
「認可不要(=事業を行っていない)」旨の証明書の添付を登記所から求められることがあります。
本稿では、現場で迷いやすい以下を、電話の掛け先・書式・順番まで落として整理します。
1.対象となる業種の範囲(運輸分野)
2.どの官庁の“どの課”に証明を出すか
3.証明願の中身と添付、そして実務の落とし穴
まず射程を押さえる:運輸分野の“人”と“物”
合併の際に「目的上事業者」証明が問題になる典型(運輸)
・海(海上運送関係)
・一般旅客定期航路事業
・港湾運送事業
(※内航海運事業は対象外)
・陸(陸上運送関係)
・旅客自動車運送事業(総称)
・一般乗合/一般貸切/一般乗用(タクシー)等
・一般貨物自動車運送事業
・第二種貨物利用運送事業
要点:“人を運ぶ”“貨物を運ぶ”で証明窓口が違う。
また、目的の書きぶりが広いと、認可対象を内包すると見なされ、やっていなくても証明添付を要求されやすい。
どこに出す?海と陸、旅客と貨物で窓口が分かれる
関東運輸局(例)の場合
・海
・旅客:海事振興部 旅客課
・貨物:海事振興部 貨物課
・陸
・旅客:交通部 旅客第1課(バス)/旅客第2課(タクシー)
・貨物:自動車交通部 貨物課
実務注意:「目的が広い会社」ほど複数課に申請が必要。
相談の一次窓口で堂々巡りになりやすいので、最初の電話で“合併の目的上事業者の証明”が趣旨であることを明言し、主管課へ直行する。
何を出す?証明願の書式・添付
・証明願(様式は統一されていない)
・会社名・本店・代表者
・合併の相手方・効力発生日
・当該事業を“行っていない”旨の証明を求める趣旨
・添付(海・陸で微差)
・合併契約書(写し)
・消滅会社の登記事項証明書(目的欄の分かるもの。海は写し、陸は原本請求例あり)
・場合により定款(目的確認用)
申請は郵送可が多く、発行まで概ね1週間が目安。
ただし前例が少ない管轄では内部確認に時間を要することがあるので、余裕を確保。
どう判断される?「目的の文言」×「やっているか否か」
・登記所の立場:目的に認可対象事業が含まれるなら、
「認可の有無」か「未実施(=認可不要)」のどちらかの書面で裏付けを取りたい。
・運輸局の立場:許可を申請する管轄でないと「やっていない」証明は出せない。
→ 旅客・貨物/海・陸ごとに分かれるのはこのため。
実務の本音:誰も詳しくないことが多い。
だから、目的が広い会社ほど“全部の窓口に確認・請求”が安全。
一方で、目的の絞り込み(定款変更)で“目的外事業者”にするのが最短のこともある(登録免許税3万円)。
3つの選択肢(コスト×確実性の比較)
| 選択肢 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| A | 証明書を取得(海・陸、旅客・貨物ごと) | 後日の指摘を封殺。王道 | 窓口が多い/時間が読みにくい |
| B | 定款の目的を縮減(目的外化) | 登記処理が単純化。証明不要へ | 登録免許税3万円/社内合意が必要 |
| C | 「不要」との口頭確認で申請 | 最速 | 後日の補正・差戻しリスクが残る |
実務推奨:AまたはB。
「合併直前に目的変更で縮減」は現実解。時間が許すならA+B併用で盤石。
現場で役立つチェックリスト
□ 消滅会社の目的に旅客/貨物(海・陸)の語が入るか
□ どの課の管轄かを最初の電話で特定(“合併の目的上事業者証明”と言い切る)
□ 証明願+合併契約書+登記簿(目的欄)を郵送
□ 複数課申請の必要有無(目的が広い場合は各課へ)
□ タイムライン:発行1週間目安/余裕を持った申請日程
□ 代替案:定款目的の縮減(合併総会で同時決議→登記)
まとめ、最短で“ないこと”を証明するコツ
・目的に広い運送表現があるだけで、「目的上事業者」の確認が立ち上がる。
・窓口は海・陸、旅客・貨物で分かれる。目的が広いほど複数課に申請。
・迷ったら定款の目的を縮減して目的外に落とすのが早い。
・いずれも、合併の工程表に1週間の証明取得枠を最初から入れておく——これで大半の事故は避けられます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、合併登記「目的上事業者」問題、何を証明する?ないこと証明の最短ルートを解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。




