会社・法人設立

「1月1日設立」や休日・祝日設立がついに可能になります。商業登記規則改正案の概要と実務への影響

元旦設立可能に

これまで「元旦設立」の会社は存在しませんでした。
登記所が年末年始(12月29日〜1月3日)を行政機関の休日として執務を行わないため、
「1月1日設立」の登記申請は不可能だったのです。

しかし、法務省が公表した「商業登記規則等の一部を改正する省令案」により、
一定の条件のもと、休日を登記日として指定できる制度が新設される予定です。
いよいよ、カレンダー上の元旦設立が実現する時代になります。

改正のポイント

改正案の骨子は次のとおりです。

対象
 会社・法人の「設立の登記」(組織変更による設立を除く)
 → 新設合併・新設分割・株式移転による設立も含む。

新設される特例規定(商業登記規則 第35条の4)
 設立登記の申請人は、
 「申請の翌日が行政機関の休日である場合」、
 その休日を登記日として指定することができる。
 (連続する休日の場合、その中のいずれかの日を指定可能)

施行予定日
 令和8年(2026年)2月2日

つまり、たとえば「令和9年1月1日設立」を希望する場合は、
前年の令和8年12月28日(月)に登記申請を行い、
申請書に「1月1日を登記日とすることを求める」旨を明記すればよい

という運用になる見込みです。

改正の背景、行政機関の休日と登記制度

これまで「設立の日=登記申請日」とされていたため、
登記所が休みである日には設立登記ができませんでした。

ただし、行政機関の休日は「執務を原則行わない日」であり、
法律上は「休日に事務を行ってはいけない」とまでは定めていません。
そのため、かつての特例では、行政との調整により
日曜に登記を行った事例(公的機関の設立など)も存在しました。

今回の改正は、そのような例外的取扱いを制度として明文化したものであり、
実際の登記所職員が元日に出勤するわけではなく、
登記システム上の処理日を休日に設定できるようにする改修が行われます。

実務上の手続イメージ

【例】「令和9年1月1日設立」を希望する株式会社
1.発起人・出資の手続を完了。
2.令和8年12月28日(月)に登記申請。
3.申請書に次のように記載
 「本申請につき、登記日を令和9年1月1日とすることを求めます。」
4.法務局は1月4日の執務再開後に処理を行い、
  登記簿上の設立日は「令和9年1月1日」と記録される。

実務への影響

(1)設立日を指定できるメリット
・企業ブランド・記念日重視の設立(例:1月1日・10月1日など)
・新年・期首合わせでの管理効率化
・合併・株式移転などのグループ再編スケジュールの柔軟化

(2)注意点
・登記簿上の成立日は休日でも、実際の登録処理は執務再開日。
・登記完了までの期間は通常よりやや長くなる可能性あり。
・設立に伴う他の行政手続(税務署・社会保険等)は、
 システム上、登記簿記載日(=休日)を基準とするため、
 提出期限・日付の整合を要確認。

本コラムのまとめ

・改正後は、「1月1日設立」など休日の日付を登記日とすることが可能になります。
・対象は、株式会社・合同会社・新設合併・新設分割・株式移転による設立登記。
・実際の手続は、前営業日に申請し、申請書に指定日を明記することで完了。
・施行は令和8年2月2日予定。
・登記制度のデジタル化が一歩進み、「日付に縛られない設立」が現実になります。

手続きのご依頼・ご相談

この改正は、実務の利便性向上だけでなく、オンライン化・システム処理の柔軟性を象徴するものです。
「登記簿の日付=現実の執務日」という制約が緩和され、企業法務における時間的な自由度の拡大が期待されます。
今後は、年末年始や大型連休前の設立案件でも、登記日を戦略的に選択できることが期待されます。

本日は、司法書士向け商業登記規則改正案の概要と実務への影響について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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