法定書類

登記申請の「添付書類」実務メモ。「定款は全文」「援用は原則×」「登記情報の落とし穴」まで総整理

登記申請の添付書類

本稿は、登記申請の「添付書類」における要点を、実務の順序で再構成したものです。
日々の申請で補正を招きやすい“落とし穴”を、根拠とともに一度で確認できるようにまとめました。

添付書類の4分類

実務は次の分類で考えると迷いません(各グループの代表例)。

区分 中身 代表例 実務キモ
第1 定款 原始定款/現行定款(代表者原本証明) 全文添付が原則、抜粋不可
第2 会社・株主が作成 株主総会議事録、取締役会議事録、就任/辞任書、株主同意書、契約書、申込み証 押印・サインの実務を正確に。援用は慎重
第3 第三者発行 官報/新聞、印鑑証明書、資格証明書、登記事項証明書、電子公告調査結果通知書 有効期間の扱いに注意。電子書式の運用差も
第4 申請のために作成 会社証明・払込証明・資料(別紙)・上申書・委任状 等 会社届出印で真正性を疎明


定款の添付は「全文」。抜粋は不可(最重要)

全文添付が原則。必要箇所のみの抜粋は不可(S35.9.26 民甲1110号)。
・添付の仕方は3パターン
 1.原始定款のみ(設立後未変更)
 2.原始定款+変更議事録(変更あり)
 3.現行定款(代表取締役の原本証明付き)
電子定款(原始定款)も理屈上は可。実務で否とされる理由は乏しく、指摘を受けたら根拠を確認。
他申請に添付した定款の再利用は不可(登記研究141)。
司法書士が証明した定款は不可(登記研究226・75)。「会社の現行定款」であることが肝。

(注意)現行定款が散逸している会社は少なくありません。
登記記録と齟齬があれば、定款全文の再承認(リニューアル)で“最新を一致”させる選択肢も現場では有効です。

議事録・別紙・契印の勘所

・「別紙(定款変更案・招集通知等)」は議事録に合綴が原則。未合綴なら、
 「◯年◯月◯日株主総会第◯号議案の別紙に相違ない」会社届出印付き証明で補う。
・契印は法定義務ではないが、一連書類性の確保で事実上必須(無いと補正リスク)。

第2グループ(会社・株主作成)の押印・サイン

基本は記名押印。自署や署名+記名も可。
 個人実印は原則不要(例外:登記法が定める場面)。
・取締役会議事録の届出印押印忘れは、追押印で足りる(作り直し不要)。
就任承諾書に会社印を押した誤りは、個人印の押し直しが望ましい(補正判断は個別)。
総株主同意書は、会社の「全員同意を得た旨の証明」では代替不可。
 他方、株主全員出席の議事録が援用可能な場面は残る(運用差あり)。

契約書・申込み証の取り扱い(総数引受・株主割当・新株予約権)

総数引受契約書は差入れ方式は不可。当事者双方の記名押印による契約書が必要。
・代表取締役以外の締結や代理人による締結も可(授権の形式証明は原則不要)。
・「申込みを証する書面」は複数のバリエーション
 1.金融機関の申込取扱い証明書(見本合綴)
 2.会社の証明書(申込み取纏め)
 3.契約書で代替(株主割当で通知・申込一体化 等)
・新株予約権は人数が多くなりがちで、②③の運用が実務的。
・金融機関発行書式は誤りが多い印象。事前確認で補正回避。

第3グループ(第三者発行)の有効期間と例外

代表取締役個人の印鑑証明書:就任承諾書に添付する場合は有効期間の定めなし。
 ただし、印鑑届書に流用するなら3か月以内必須(援用前提なら最初から新しいものを)。
公認会計士・税理士の資格証明:有効期間の定めなし。
電子公告調査結果通知書は、紙は会社実印、電磁的記録は電子証明付与という運用が一般的(先例というより実務運用)。

「援用」できる/できないの線引き

定款の援用は不可(常に“現行全文”で確認させる趣旨)。
合併契約書/計画書は、「◯◯を証する書面」ではなく“そのもの”の添付が建付け。
議事録別紙の合綴では不可と扱う法務局が増加。
・「資料(議事録別紙)」は届出印付きで単独添付が許容される場面あり(運用差に注意)。

机の上に置くべきミニ・チェックリスト

1.定款は“現行全文”か(代表者原本証明は整っているか)
2.別紙は合綴+契印か(未合綴なら会社証明で補強)
3.議事録の押印種別(取締役会は届出印/外国役員はサイン)
4.個人印鑑証明の用途(就任承諾書か、印鑑届書に援用するか)
5.登記情報の利用可否(役員順序の都合)
6.援用の可否(定款×、契約・計画書は独立添付が安全)

本コラムのまとめ

定款は全文・抜粋不可、援用は原則×。ここが最大の補正ポイントです。
押印・契印は“真正性疎明”の道具と理解し、体裁不備を潰す。・合理性よりも「運用の型」が優先される場面が多いのが商業登記。事前照会と“型通り”の準備が結果的に最短ルートです。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、登記申請の「添付書類」実務メモ。「定款は全文」「援用は原則×」「登記情報の落とし穴」まで総整理いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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