株主総会議事録における「株式数・議決権数」の扱い
必要的記載事項ではないが、問い合わせや補正の原因になりやすいポイント
株主総会議事録を作成する際、発行済株式総数・議決権数・株主数・出席株主数などを記載することがあります。
これらは会社法上の必要的記載事項ではないため、書かなくても違法ではありません。
しかし、記載した場合に計算が合わなかったり、登記簿と数字が一致しないと、法務局から問い合わせや補正指示を受けることがあるのが実務上の悩ましい点です。
本稿では、実際にあった問い合わせ事例や、記載をめぐる実務上の注意点を整理します。
法務局からの問い合わせが多いケース
(1) 単元株制度がある場合
・例:1単元=50株、株主Xが51株保有 → 議決権は1個
・例:株主Yが99株保有 → 議決権は1個
・自己株式もある場合、「発行済株式総数 ÷ 単元株式数 ≠ 議決権総数」 となる。
・登記官が単純計算して「数が合わない」と電話してくることがある。
→ その場合は、「単元株制度・自己株式の有無により計算結果が異なる」旨を説明すれば足りる。
(2) 発行済株式総数
・定時株主総会で「基準日現在」の発行済株式総数を記載したが、登記簿上の発行済株式総数と異なると、照会が来ることがある。
・実際には基準日と登記簿記載日でズレがあるだけ。
・記録として誤りではないが、法務局にとっては「違う数字」に見える。
→ 「基準日現在である」ことを明記すれば、理解してもらいやすい。
記載の有無によるリスクとメリット
・書かなくてもOK:必要的記載事項ではない。
・書くと補正リスク:数字が合わないと、問い合わせや補正の原因に。
・全く書かないのも不自然:形式的に物足りなさを感じるケースも。
実務傾向
・最近は、発行済株式総数を省略する会社も増えている。
・書面決議の場合は、議決権総数や株主数を全く記載しないケースも多い。
→ 全員同意が前提なので、議決権数を明記しても実質的な意味が薄い。
実務上の工夫
・登記申請時に、議事録と一緒に補足説明のメモを添付すると、法務局とのトラブルを減らせます。
・例:「単元株制度により、株主ごとの議決権数は発行済株式総数÷単元数と一致しない」
・例:「本総会議事録の発行済株式総数は基準日現在の数値」
→ 相談官との事前相談で確認した事項も、申請書にメモを残すのが親切。
本コラムのまとめ
・株主総会議事録における株式数・議決権数の記載は必須ではない。
・記載すれば補正リスクがあるが、全く書かないと据わりが悪い。
・単元株制度や基準日指定がある場合は補足メモで説明しておくと安心。
・書面決議の場合は、省略しても支障はない。
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本日は、株主総会議事録における「株式数・議決権数」の扱いについて解説いたしました。
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