取締役会議事録に記名押印(署名)がそろわない場合の整理
本コラムの概要
取締役会議事録に一部取締役の記名押印(署名)が欠ける事態は、入院・長期出張・署名拒否など実務上まれに発生します。
本稿では、取締役会議事録の成立要件と、欠落がある場合の登記実務上の対応を整理します。
取締役会議事録の記名押印の基本
会社法下では、取締役会議事録は、出席取締役および出席監査役の記名押印が必要です。
一方で、株主総会議事録は会社法施行により署名義務がなくなりました(定款で義務付けている場合は除く)。
記名押印が欠ける場合に許容される取扱い
①「やむを得ない事情」があるとき
・例:死亡・長期海外出張・署名拒否など。
・疎明資料の添付により登記が可能とされます。
・取締役会議事録に他の出席取締役全員の実印押印+印鑑登録証明書添付、代表取締役作成の上申書など、事情が理解できる書面を添付する方法が挙げられます。
・実務例:代表取締役作成の上申書を添付し、受理されています。
②「出席取締役の過半数」の記名押印があるとき
・出席取締役の過半数の記名押印(または、出席取締役を列記し過半数の捺印)があり、かつ定足数を満たす場合、登記は可能と扱われます。
・この場合、やむを得ない事情の疎明を要しない取扱いが示されています。
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実務上の組み立て(登記提出時)
基本線
・まずは出席取締役の過半数の記名押印(定足数充足)で成立を図る。
・それでも欠ける場合は、上申書等の疎明資料で事情を補う。
監査役について
・監査役は定足数に関係しないが、出席した監査役は記名押印が必要。
書面決議(代表取締役選定など)
・同意書が全員分そろっても、実印押印が伴わない事例は留意を要します。必要に応じて、やむを得ない事情の疎明で補う考え方が示されています。
互選書との関係
・代表取締役の互選についても、過半数の記名押印があれば足りるとの扱いが確認されています。
本コラムのまとめ(実務指針)
・第一選択肢:出席取締役の過半数の記名押印(定足数充足)で議事録を成立させる。
・補完策:それでも欠ける場合は、代表取締役等の上申書など疎明資料を添付する。
・監査役の扱い:出席した監査役は記名押印が必要(定足数とは別次元)。
・書面決議・互選:過半数の記名押印で成立し得るが、実印未押印など形式不足があれば、事情の疎明で補うことを検討する。
実務では、全員分の記名押印を収集できない場面でも、上記の枠組みで必要最小限の要件を満たすことで、登記の受理に至った例が確認されています。
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本日は、取締役会議事録に記名押印(署名)がそろわない場合の整理について解説いたしました。
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