合同会社の設立で迷いやすい「払込み証明書」と押印者の肩書き、領収書方式と“誰が・何印で”証明するかを整理
合同会社の払込み証明書
合同会社設立時の「払込みをしたことを証する書面」は、
・①通帳写し等を綴じた株式会社タイプ”の証明書(職務執行者が証明)
・②出資金の領収書(代表社員の代表者が発行)
のいずれでも可、とされる実務の中で、証明者の肩書き・押印が誰の何印かが混乱ポイント。
さらに、代表社員が法人で、職務執行者を選任しているときに、設立時/設立後で権限表示が変わることも錯覚のもととなります。
2系統の「払込み証明」の“作り手”が違う
① 通帳写し等を綴じた「株式会社タイプ」の証明書
・誰が証明するか:合同会社の(代表社員の)職務執行者
・押す印:合同会社の届出印
・理由:これは登記申請のために作る書面なので、設立後の合同会社の職務執行者が証明する位置づけ。
② 出資金の領収書
・誰が発行するか:合同会社の代表社員(=法人)の代表者
・押す印:代表社員たる株式会社の印(届出印でなくても可)
・理由:領収書は登記書類ではなく受領行為の証憑。設立前の段階で職務執行者には受領権限がないため、受領権限者=代表社員(法人)の代表者が発行する、という位置づけ。
設立時/設立後で“権限表示”が入れ替わる
・設立時の領収書:代表社員(法人)の代表者名義で発行(会社印)。
・設立後に追加出資の払込み証憑を作るとき:代表社員の職務執行者名義で作成し、合同会社の届出印を押す。
書面ごとの「肩書き・署名者・押印」早見
書面 | 目的・タイミング | 肩書き表示 | 署名者 | 押印 |
---|---|---|---|---|
払込み証明(通帳写し綴じ) | 登記申請用(設立時) | 代表社員 職務執行者 | 職務執行者 | 合同会社の届出印 |
出資金領収書(設立時) | 受領証憑(設立前行為) | 代表社員(法人) | 代表社員の代表取締役等 | 法人の社印(届出印でなく可) |
資本金計上額の決定書 | 追加出資時(設立後) | 業務執行社員(の決定) | 業務執行社員の職務執行者 | 合同会社の届出印 |
定款変更の同意書 | 総社員同意事項 | 社員 | 社員たる法人の代表者 | その法人の印 |
まず「どの資格で行為するか(社員/業務執行社員/代表社員)」を決め、その資格に応じて誰が、どの印を押すかが決まる。
よくある落とし穴
設立時の領収書なのに、法務局の指示で職務執行者名義+合同会社届出印に直すよう言われたが、誤り。
→ 領収書は設立前の受領行為なので、代表社員(法人)の代表者名義+法人印が正しい。
誰の名でハンコを押すかは、
1.社員としての同意か、
2.業務執行社員の決定か、
3.代表社員としての受領か、
を先に峻別すれば崩れない。
本コラムのまとめ
・払込み証明は二系統:登記用の証明書=職務執行者+合同会社届出印/領収書=代表社員(法人)代表者+法人印。
・設立後は、出資受領や資本金計上の決定等、職務執行者名義+合同会社の印に切り替わる。
・迷ったら、まず行為主体(社員/業務執行社員/代表社員)を決め、その主体の署名者と押印を当てはめればブレません。
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本日は、合同会社の設立で迷いやすい「払込み証明書」と押印者の肩書きについて解説いたしました。
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