法定書類

特別利害関係と取締役会決議 、実務でどう判断するか

特別利害関係とは何か

会社法上、取締役会の決議に関与できない「特別利害関係を有する取締役」が定められています。
これは、ある取引や議題において、取締役本人またはその近親者が経済的な利害関係を持つ場合に該当します。

例えば、
・自らが相手方となる取引(典型的な利益相反取引)
・関連会社や親族企業を通じた取引
・報酬や地位に直接影響する議題

などが典型例です。

利益相反取引との関係

よく混同されますが、
・利益相反取引→会社と取締役本人との取引など、会社法356条に列挙された取引類型
・特別利害関係→利益相反取引を含む、より広い概念

したがって、「利益相反取引だから特別利害関係人」という単純な一致関係ではなく、利益相反取引に当たらなくても特別利害関係に該当する場合がある点に注意が必要です。

グレーゾーンの扱い

実務では「特別利害関係に該当するか微妙なケース」にしばしば直面します。

・定足数に算入できない
・議決権を行使できない
・議長を務められない
・当該決議のみの取締役会であれば、そもそも招集手続を要しない

こうした影響が大きいため、グレーな場合に「除外」してしまうと、逆に取締役会の適法性に疑義が残ることもあります。

実務対応の考え方

私たち実務家としては、最終的に「白黒を即断できない場合にどう振る舞うか」が重要です。
・影響が軽微な場合→議決に参加させても決議の結果に影響しないように調整
・影響が大きい場合→利害関係があるとみなし、決議から除外する方向で整理

どちらを選ぶにしても、会社側には「判断が分かれる余地がある」という事実を説明し、最終判断を経営側に委ねる姿勢が望ましいでしょう。

親子会社の場合の例外

100%子会社と親会社の間での取引は、利益相反や特別利害関係の問題が生じないと整理されています。完全支配関係では、利害が一致しているためです。

本コラムのまとめ

特別利害関係の判断は、単なる形式論では割り切れない場面が多く、まさに「グレーゾーン対応」がカギとなります。
司法書士や弁護士が関与する際には、法的な論点を明確にしつつ、実務的には「決議の有効性を揺るがさない運用」を提案することが肝要です。

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本日は、特別利害関係と取締役会決議 、実務でどう判断するかについて解説いたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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