吸収合併 / 組織再編

存続会社の事後開示書面、消滅会社の事前開示の承継と「重複開示」の扱い

事後開示書類の作成

3月は組織再編(合併/会社分割(吸収)/株式交換)が重なり、事後開示書類の作成が続きます。
事後開示は、基本的に手続の経過報告であり、事前開示に比べれば作成の考えどころは少なめです(事前開示は追加開示事項・債務履行見込みなど会社ごとの作文が要る)。
上場会社が関与する場合は、適時開示・臨時報告書の有無・事前相談のタイミングなど開示の段取りが加わります。

合併に特有の「事前開示の承継」

・合併は消滅会社が無くなるため、存続会社の事後開示で消滅会社の事前開示書類を継続開示します。
・期間は、効力発生日から6か月間。
・もっとも、合併契約の内容は両社で共通のため、その部分を除いた消滅会社側の事前開示書類を、存続会社が開示する運びになります。

論点:存続会社の計算書類等は「重複開示」か?

事前開示書類には計算書類等が含まれ、消滅会社側は「存続会社の計算書類等」を事前開示していました。
一方で、存続会社にはもともと計算書類等の備置義務があります。
したがって、存続会社が“承継して”自社の計算書類等を再度開示するのは重複では?という疑問が生じます。

実務のばらつき

省略している会社もあれば、重複して開示している会社もある。
・法令上「省略可」と断言できる条項は見当たらず、省略しない方向で運ぶのが安全と判断。

事前開示・適時開示まわりの実務メモ

原本証明:消滅会社の計算書類等について、原本証明を付して開示している例/付さない例の双方あり。相手先との関係性を踏まえて判断。
契約書の見せ方原本のコピーを掲載する会社もあれば、押印のないテキストで内容のみ掲げる会社もある。取引所からの一律指示は限定的。
事前相談の組み込み:開示前に取引所へ事前相談(任意扱い含む)。相談に持ち込む前に開示原稿を仕上げておく必要があるため、スケジュールに事前相談を織り込む。

実務チェックリスト(合併・存続会社の事後開示)

基本枠組み
□ 適時開示:業務執行機関の決定後、直ちに。
□ 事前開示:適時開示後、本店備置開始日までに。
□ 事後開示:効力発生日後すみやかに。

合併特有(承継)
□ 消滅会社の事前開示書類(※合併契約部分を除く)を存続会社で開示継続(6か月)。
□ 存続会社の計算書類等の扱いは重複開示を基本線に(省略の根拠条項なし/実務はばらつきあり)。

法面のばらつきに備える
□ 原本証明の要否:相手先・関係性で判断(原本証明付きの例・なしの例あり)。
□ 契約書の形式:原本コピー/テキストのどちらで開示するか、過去の社内慣行とIR方針に合わせる。
□ 代理店経由の公告や異議申述期限など、外部所要日数を逆算してスケジュール化。

本コラムのまとめ

・合併の事後開示では、存続会社が消滅会社の事前開示を承継して開示する点が最大のポイント。
・存続会社の計算書類等については、重複感はあるものの、省略の明文根拠がないため開示する前提で設計。
・原本証明・契約書の体裁・事前相談の時期などは実務に幅がある。社内IR・取引所との事前調整をスケジュールに必ず織り込む。

手続きのご依頼・ご相談

存続会社の事後開示書面、消滅会社の事前開示の承継と「重複開示」の扱いについて解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから