遺言・相続・遺産承継

相続したマンションの名義変更(相続登記)手続ポイント・必要書類・費用・税金を専門家が整理

本コラムの要点

相続登記は令和6年4月1日以降「義務」です。相続を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になり得ます。
・マンションは専有部分(部屋)+敷地権(多くは土地の共有持分)がワンセット。建物と敷地の双方が登記対象になります(敷地権付き区分建物の場合は一体で処理)。
・売却・賃貸・住宅ローンなど次のアクションは相続登記完了が前提。早めの準備が最短ルートです。

手続の全体像

1.遺言の有無確認(自筆証書遺言は原則「検認」要/公正証書・自筆証書遺言保管制度は検認不要)
2.相続人・財産の確定(出生〜死亡までの戸籍収集/不動産・預金・負債の調査)
3.遺産分割(現物・代償・換価・共有のいずれか)
4.相続登記申請(法務局へ)
5.相続税の申告・納付(10か月以内。基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人)

期限に間に合わない恐れがあるときは、相続人申告登記の活用で「3年以内」義務のリスクをいったん回避し、後続の本登記へつなげます。

必要書類(ケース別の最短)

1) 遺言で相続する場合
 ・遺言書(自筆=検認済み原本/保管制度=遺言書情報証明書/公正証書=正本または謄本)
 ・被相続人:出生〜死亡までの戸籍・除籍、住民票の除票
 ・取得者:住民票
 ・固定資産評価証明書(建物・土地)
 ・登記申請書、相続関係説明図(※遺言の種類により省略可の場面あり)

2) 遺産分割協議で相続する場合
 ・遺産分割協議書(相続人全員の署名押印)
 ・相続人全員:戸籍謄本、印鑑登録証明書
 ・被相続人:出生〜死亡までの戸籍、住民票の除票
 ・固定資産評価証明書、登記申請書、相続関係説明図

3) 法定相続分どおりに相続する場合
 ・相続人全員:戸籍謄本
 ・被相続人:出生〜死亡までの戸籍、住民票の除票
 ・固定資産評価証明書、登記申請書、相続関係説明図

ポイント:マンションは「敷地権が複数筆」になっていることがあり、評価証明書・登記情報は筆数分必要です。事前に登記事項証明書で筆数を確認しましょう。

費用の目安(内訳と考え方)

区分 計算・相場の考え方
登録免許税(必須) 固定資産税評価額×0.4%(建物評価+敷地権持分評価の合算が基礎)
公的証明書の実費 戸籍・住民票・評価証明・郵送費等で数千円〜1万円台が一般的
司法書士報酬 事案(戸籍収集の有無、筆数、相続人の数)により変動。数十万円台〜が目安(見積り提示)


敷地権付き区分建物の登録免許税(計算例)

・敷地全体評価額:10億円/持分:1/100 → 敷地持分評価=1,000万円
・部屋の建物評価:800万円
・合算評価=1,000万+800万=1,800万円 → 登録免許税=1,800万×0.4%=72,000円

税金(相続税・不動産取得税・固定資産税)

相続税:相続から10か月以内。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)以内なら申告不要のケースも。
→節税の代表例:配偶者の税額軽減/小規模宅地等の特例(自宅等で最大80%減)/取得費加算の特例(相続から3年10か月以内の売却で有利) など。
不動産取得税:相続による取得は非課税(贈与等は別)。
固定資産税・都市計画税:毎年課税。共有や持分の変化は管理会社に速やかに連絡。

マンション特有のチェックポイント

敷地権・付属施設の有無(機械式駐車場、倉庫、トランクルーム、屋上利用権 等)
管理費・修繕積立金・駐車場使用料の滞納有無(相続人が承継)
管理規約の承継手続・管理組合への名義変更届
土地が複数筆/団地型(複合不動産)かの確認
専有部分の状態(雨漏り・配管・アスベスト・耐震)と今後の大規模修繕計画
・将来売却するなら「名義整備→資料整備」(管理規約、長期修繕計画、重要事項調査報告書 等)が価格に直結

よくある落とし穴

・戸籍は死亡が記載された“最後の1通”だけでは不十分。出生から死亡まで連続で取得。
・遺言があっても検認や付随書類を誤ると補正に。
・敷地権が複数筆なのに評価証明・登記情報を1筆分しか取っていない。
・売却を急いで登記前に媒介→決済直前で停止。登記が先。
・相続税と登記を同じタイムラインで動かさず、10か月期限を逸する。

進め方(当事務所の標準フロー)

1.ヒアリング(相続人・戸籍状況・物件概要・売却の有無)
2.必要書類リスト化と回収動線(取得先・費用・所要日数を明示)
3.申請一式の作成/代理申請(補正ゼロ設計)
4.売却・賃貸・自宅化など次の一手まで見据えた書類整備(管理組合届出、名義変更、関係者周知)

本コラムのまとめ

・相続登記は3年以内に必須。
・マンションは建物+敷地権をワンセットで考える。
期限・筆数・管理情報の3点管理で手戻りを防ぐ。
・売却・賃貸・自宅化のいずれでも、相続登記完了が出発点です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、相続したマンションの名義変更(相続登記)手続ポイント・必要書類・費用・税金を専門家が整理について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)・不動産登記に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから