株式移転 / 組織再編

新設型再編の株式買取請求、通知方法・期間計算・実務判断の勘どころ

公告と個別通知、どちらを選ぶか

債権者保護公告と株式買取請求に関する株主通知は兼ねられるのが理想ですが、兼ねられない場合は次を比較して選択します。

公告(官報など)
・費用:おおむね3万円前後
・期間計算:一律に処理できる(掲載日の翌日から起算)
・文面:簡素にできる(読まれにくい前提のため)

個別通知(郵送)
・費用:郵送費(株主数に依存)
・期間計算:到達主義のため株主ごとに起算日がズレる可能性
・文面:法定要件だけでは伝わりづらい。分かりやすい解説を要する

少数株主・関係者が事情を理解している場合は個別通知が機能します。
株主が多い、文案調整が難しい、問い合わせが想定される場合は公告が無難です。

新設型での「20日間」の扱い(始期・終期)

・公告で通知→公告掲載日の翌日から20日間が請求期間。起算が一律で扱いやすい。
・個別通知→各株主への通知到達の翌日から20日間。起算が人により異なり得る。

ポイント
・債権者個別催告と似ているが、買取請求は「ちょうど20日」規定。
・会社が20日“以上”の任意期間を設定できるかは不明確(実務上は20日確保を最優先に運用)。
・休日の扱いについても、新設型では明確に割り切れない余地があり、とにかく20日を実質確保する設計が安全です。

「総会時期」との関係

新設型では、買取請求期間中に株主総会が開催される必要があると解されています。
たとえば、7/1効力発生日・5/21公告・6/29総会だと、公告から20日以内に総会が入らずNGとなり得ますので、公告や通知の時期を総会に合わせて調整することが不可欠です。
→ 公告タイミングの後ろ倒し/個別通知/通知公告単独などで再設計。

実務上の検討ポイント

・到達日管理:到達主義ゆえに、株主ごとに期間がズレる理屈。現実的な把握方法に悩ましさ。
・20日の“ぴったり”か“以上”か:条文構造上の読み分けが曖昧。実務では20日確保で割り切る対応が多い。
・満了日が休日:吸収型のように機械的に前日で切れない場面も想定され、余裕を持つのが安全。

文面設計(通知が“伝わる”ために)

法定記載事項(例:新設分割では「分割を行う旨」「新設会社の商号・本店」)のみでは株主にとって理解困難です。
通知では以下を明示するのが実務的に適切です。

・あなたには買取請求権がある/ない
・行使方法(誰宛て・必要書類・連絡先)
・行使期間(いつからいつまで)
・行使した場合の流れ(対価・支払時期の目安)

どちらを選ぶかの目安

・株主が少数で、事前説明が通る/問い合わせ対応が可能 → 個別通知
・株主数が多い、スケジュールがタイト、文面調整で混乱しそう → 公告
・公告+個別通知の併用も検討価値(リスク低減)

現場の結論と運用

・実際には買取請求を行使する株主は稀。形式面の整合を重視。
・通知と公告の兼用ができる場面も多く、コストとわかりやすさのバランスで決める。
・どうしても個別通知が必要なら、到達管理の工夫と20日実質確保で安全側に。
・総会時期/効力発生日/公告・通知の三点をカチッと噛み合わせるのが肝。

手続きのご依頼・ご相談

手続の選択とスケジュール設計でリスクを前倒しで潰す発想が大切です。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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