贈与

贈与された不動産を登記しないリスクと実務対応、手続の流れ・必要書類・費用まで

本コラムの要点

・不動産を贈与されたら速やかに所有権移転登記を行うのが原則です。登記を先延ばしにすると、撤回・二重処分・相続混入・税務追徴などの重大リスクが高まります。
・生前贈与の登記は、原則贈与者・受贈者の共同申請で進めます。必要書類は贈与契約書・贈与者の印鑑証明書・受贈者の住民票・固定資産評価証明書など。
・主要コストは登録免許税(固定資産税評価額×2.0%)と各種証明書の実費です。実務では贈与税申告(翌年2/1〜3/15)や不動産取得税(原則4%/住宅特例あり)も忘れずに。

不動産の贈与登記とは

贈与(無償譲渡)を原因として、登記簿上の所有者を贈与者→受贈者へ公式に切り替える手続です。登記を完了して初めて、受贈者は第三者に対して所有権を主張できます。
なお、贈与の形態は大きく生前贈与/死因贈与/遺贈に分かれ、生前贈与は直ちに登記、死因贈与や遺贈は死亡後に登記します(実務では死因贈与で仮登記を合わせて検討)。

登記しないままの5つのリスク

1.撤回リスク
書面によらない贈与は、履行前であれば撤回されうると解されます。高齢・判断力低下局面では撤回主張が顕在化しやすく、受贈者に不利益が生じます。

2.二重処分・時効取得で負ける
同一不動産について第三者が先に登記を備えた場合、受贈者は所有権を主張できません。売買・担保設定・占有の長期化(時効)など、さまざまな場面で不利になります。

3.贈与者死亡で手続が複雑化
本来は贈与者と共同申請ですが、贈与者死亡後は相続人の関与や追加書類が必要となり、抵当権者など利害関係人が絡むとさらに煩雑化します。

4.相続財産に混入して遺産分割の対象化
登記未了だと相続財産に紛れ込み、受贈者単独承継の趣旨が崩れ、分割協議の対象となりかねません。

5.贈与税の追徴(延滞税・無申告加算税)
税務は実体主義のため、登記の有無にかかわらず贈与があれば課税対象です。未申告は追徴のリスク。

手続の流れ(自分で行う場合の全体像)

1.事前調査・登記事項証明書で対象物件の現況確認。
2.必要書類の収集

 - 贈与契約書(原則書面。可能なら公正証書が無難)
 - 贈与者の印鑑登録証明書
 - 受贈者の住民票の写し
 - 固定資産評価証明書(登録免許税の計算に使用)
 - 登記識別情報(贈与者側で必要となる場合あり)
3.登記申請書の作成:目的「所有権移転」、原因「令和◯年◯月◯日贈与」。
4.申請:不動産所在地の法務局へ窓口/郵送/オンラインで提出。
5.完了確認:登記完了通知・登記識別情報を受領し、最新の登記事項証明書で名義を確認。

死因贈与は公正証書+仮登記を併用して保全を図る運用が一般的です。詳細は個別相談で調整します。

必要書類(生前贈与・標準)

・登記申請書
・贈与契約書(できれば公正証書)
・贈与者:印鑑登録証明書
・受贈者:住民票の写し(認印可)
・固定資産評価証明書
・司法書士に依頼する場合の委任状 など

費用のめやす

費目 計算・相場 備考
登録免許税(必須) 評価額×2.0% 例:評価1,000万円 → 20万円
公的証明書の実費 数百円〜数千円 住民票・印鑑証明・評価証明 等
契約書の印紙税 契約金額等により数百円〜1万円程度 贈与契約の様式に応じて変動
不動産取得税 原則4%(住宅特例で3%等あり) 都道府県税。贈与による取得でも原則課税
司法書士報酬 2〜9万円程度(事案により増減) 書類収集・申請一式を委任する場合

※不動産取得税の軽減・非課税の可否は、用途・面積・取得時期で変動します。事前確認が肝心です。
※贈与税は翌年2/1〜3/15に申告・納付。相続時精算課税や各種特例の適用可否は税理士と連携して検討します。

実務での注意点

贈与契約の書面化/公正証書化:撤回・相続混入・税務の証拠対策として有効です。
成年後見・任意後見の検討:贈与者の判断能力低下リスクがある場合の保全策。
第三者対抗要件は“登記のみ”:合意や引渡しだけでは足りません。登記完了までがセットだと認識してください。
税務と登記を別物として管理:登記が未了でも贈与税は課税対象になり得ます。スケジュール管理を徹底。
死因贈与は早めの保全:公正証書化と仮登記で「約束倒れ」と第三者対抗のリスクを抑制。

すぐに動けないときの“暫定”対処

・公正証書による贈与契約で証拠化し、推定相続人にも合意メモを回覧・保管。
・贈与税の期限内申告(必要に応じて相続時精算課税の選択)。
・贈与者の体調・判断能力に不安があるときは任意後見契約を前広に検討。
※あくまで暫定策です。最短で本登記に着手してください。

手続きのご依頼・ご相談

贈与された不動産を登記しないリスクと実務対応、手続の流れ・必要書類・費用について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)及び不動産登記に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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