遺言・相続・遺産承継

相続で不動産取得税はかかる?非課税の原則、課税となる例外、計算・軽減まで司法書士が整理

結論(最初に全体像)

相続で土地・建物を取得した場合、不動産取得税は原則“非課税”です。
根拠は地方税法73条の7で、「相続」および「包括遺贈」、さらに「被相続人から相続人に対する特定遺贈」も非課税に含まれます。

ただし、生前贈与・死因贈与・相続人以外への特定遺贈等は課税対象です。
併せて、住宅取得のときは税率3%の軽減(本則4%)などの特例も存在します。

相続では原則“非課税”となる理由

不動産取得税は「取得」に対する道府県税ですが、相続等の“形式的な所有権移転”には課税しないと法律で定められています。
具体的には相続・包括遺贈・相続人への特定遺贈が非課税です(地税法73条の7第1号)。

遺産分割の「やり直し」でも非課税か

いったん成立した遺産分割協議を合意解除→再分割したケースでも、なお「相続による取得」と解され非課税とした最高裁判例(昭和62年1月22日)が存在します。
実務で論点になりやすい場面です。

例外:相続でも不動産取得税がかかる主なケース

下表がシンプルな目安です(「○=課税」「—=非課税」)。

取得の態様 相続人が取得 相続人以外が取得
相続
包括遺贈
特定遺贈(特定不動産を指定)
死因贈与(死亡を条件とする贈与契約)
生前贈与

死因贈与は、税務上は相続税の対象でも、不動産取得税は課税となる点が落とし穴です。
相続時精算課税を選んだ生前贈与でも、不動産取得税は別途課税(贈与時点)。都道府県の公式Q&Aでも明示されています。

不動産取得税の基本:計算式と軽減


基本の計算式

課税標準=固定資産税評価額
税率=本則4%(※住宅や土地は時限軽減あり)
例:評価3,000万円 × 4% = 120万円(軽減適用前の概算)。

住宅・土地の軽減措置(時限)

住宅の取得:税率3%(本則4%)、
課税標準の特例(新築は1,200万円控除/中古も建築時期に応じ同額控除)等、適用期限は原則 令和9年3月31日まで。詳細は国交省の整理を参照ください。
ポイント:軽減の可否は用途・床面積・取得時期で変わります。実行前に自治体の適用要件を要チェックです。

相続不動産で気をつけたい「他の税」

登録免許税:相続の所有権移転は0.4%、一方で遺贈(相続人以外)・贈与・死因贈与は2%と負担差が大きい。登記コスト比較は意思決定に直結します。
固定資産税・都市計画税:毎年課税(住宅用地特例あり:200㎡以下は課税標準1/6 等)。
譲渡所得税:売却時に申告。相続3年内売却の取得費加算、空き家の3,000万円特別控除など特例検討を。

申告・手続の実務メモ

申告期限:登記した取得は原則申告不要ですが、未登記取得等は60日以内申告が必要(自治体要領)。実務上の照会先・様式は都道府県税部局へ。
評価額確認:固定資産課税台帳(評価証明)で最新額を確認し、軽減の事前適用判断に用います。
遺贈の文言:包括遺贈/特定遺贈の書き分けが課税に影響。遺言の起案段階から税務影響を踏まえた表現が肝要です。

実務で迷ったら(判断フローの簡易版)

・取得原因をラベル付け(相続/包括遺贈/特定遺贈/死因贈与/生前贈与)。
・地方税法73条の7に該当するかで非課税可否を判断。
・課税となる場合は住宅・土地の軽減が使えるかをチェック(期限・要件)。
・同時に登録免許税の税率(0.4% or 2%)も確認し、総コストを比較。
・申告期限・書式・添付を都道府県のQ&Aで最終確認。

手続きのご依頼・ご相談

相続で不動産取得税はかかる?非課税の原則、課税となる例外、計算・軽減について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)、相続登記に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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