法定書類

株主名簿記載事項証明書と株主への対応

株主が求める「証明」の形

株主としては、自分が確かに株主であることを示す書面を欲しがるケースがあります。
従来は「株券不所持申出」に対して会社が株券不所持受理通知を発行していましたが、会社法で株券不発行が原則となった今、この手続は不要になりました。
そもそも株券が発行されていないのに「株券不所持」を申し出るのは不自然であり、実務上も違和感があります。

株主名簿記載事項証明書との関係

「株主名簿記載事項証明書」(会社法123条)は株券不発行会社で株主が請求できる制度ですが、形式的に利用するには限界があります。
そのため、株主に安心感を与える目的で、会社が任意に証明書を発行する方法が考えられます。

任意の証明書の例文

実務では、以下のような文面で証明書を発行することがあります。

証明書(例)
株主 ○○ 殿
貴殿が保有する当社株式について、当社は会社法第215条第4項に基づき、株券を発行しない取扱いとしております。
そのため、万一株券の交付が必要となる場合には、当社所定の請求書にご記入・ご押印のうえ、ご請求ください。

なお、現在株主名簿に記録されている貴殿の保有株式数は ○○株 です。
令和○年○月○日
○○株式会社 代表取締役 △△ 印

この証明書は「株式の所有者であること」を直接証明する趣旨ではなく、株券不発行であることを前提に、現時点の株主名簿記載を確認するための通知と位置づけられます。

過去の「株券不発行」と現在の違い

「株券を発行しなければならないのに、発行していなかったら違法なのでは?」という疑問も寄せられます。
しかし、まさにそのような会社が多かったために、会社法で「株券不発行が原則」とされました。現在は適法であり、今さら株券不所持手続をする必要はありません。

本コラムのまとめ

・株主は株主であることを示す書面を求めることがある。
・会社法上の株主名簿記載事項証明書は制度的に限界があり、任意の証明書発行が実務的な解決策となる。
・株券不所持手続は株券発行会社にのみ必要であり、株券不発行会社では不要。
・現在は株券不発行が原則であり、かつての「発行義務違反」の問題は解消されている。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、株主名簿記載事項証明書と株主への対応について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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