不動産登記 / 贈与

親から子へ不動産の名義変更、相続と生前贈与の最短ルートと費用・書類チェックリスト

親から子への不動産名義変更

名義変更は相続登記(死亡後)か贈与登記(生前)で行います。
2024年4月1日から相続登記は義務化、相続開始を知った日から3年以内。怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。

登録免許税の概算目安:相続0.4%、贈与2.0%(固定資産評価額×税率)
住宅取得の売買等に限り軽減(例:0.3%)がある一方、贈与は軽減対象外が原則です。

不動産取得税は本則4%、住宅取得は3%へ軽減(令和9年3月31日まで)。
贈与や相続の有無・用途で適用関係が変わるため事前確認が必須です。

どちらの手続に当てはまる?(相続 or 生前贈与)

状況 手続の名称 いつ・誰の意思で 税の主眼 向いている場面
被相続人の死亡後に名義を変える 相続登記 死亡後/相続人の協議または遺言 相続税(基礎控除・小規模宅地等)+登録免許税0.4% 自宅を誰が承継するかを遺言や協議で決めるケース
生前に親が子へ移す 贈与による所有権移転 生前/贈与者の意思 贈与税(暦年・相続時精算課税)+登録免許税2.0% 認知症対策、事業承継、値上がり資産の早期移転

相続登記は義務(3年以内)。履行が難しければ相続人申告登記で期限内に最低限の申告を先行できます。

手続の流れと必要書類(実務版チェックリスト)


生前贈与(親→子)

流れ
1.登記事項証明書・評価証明の取得→物件特定
2.贈与契約書の作成(負担付の有無、持分割合を明確化)
3.所有権移転登記の申請(原因「贈与」)
4.完了後、登記事項証明書で名義確認

主要書類
1.登記事項証明書/固定資産評価証明書
2.贈与者の印鑑証明書、受贈者の住民票
3.登記識別情報通知(旧権利証)
4.贈与契約書(実印・日付・目的物・対価有無など明確に)

登記申請書の様式・記載例は法務局公開の公式様式を参照(相続用・贈与用で記載欄が異なります)。

相続(相続登記)

流れ
1.遺言の有無確認 → ない場合は相続人確定・遺産分割協議
2.不動産調査・評価証明取得
3.相続関係説明図を作成
4.所有権移転登記の申請(原因「相続」または「遺産分割」等)
5.完了後、登記事項証明書で名義確認

主要書類
1.相続人全員の戸籍(被相続人は出生~死亡の連続戸籍・除票)、相続人の住民票
2.相続人の印鑑証明書(遺産分割協議を行う場合)
3.相続関係説明図、遺産分割協議書または遺言書 等
4.固定資産評価証明書

相続登記は3年以内の申請義務+過料10万円以下のルールが施行済。迷う場合は相続人申告登記の活用で期限管理を。

いくらかかる?費用の全体像(税・実費・報酬)

登録免許税(登記時の国税)

登記の原因 税率(課税標準×税率) 根拠
相続による所有権移転 0.4% 国税庁タックスアンサーNo.7191。土地100万円以下の相続移転等に免税措置あり(時限)。(国税庁)
贈与による所有権移転 2.0% 本則。住宅用家屋の売買等に限り0.3%などの時限軽減があるが、贈与は対象外が原則。(国税庁)

不動産取得税(都道府県税)
本則4%、住宅取得は3%に軽減(令和9年3月31日まで)。適用可否は取得原因・用途・床面積要件等で変動。
具体額は固定資産評価額で計算します。評価替え年度や家屋の新旧、住宅要件でブレるため、実行前に評価証明で試算するのが安全です。

司法書士報酬・実費
事件難易度・書類収集の範囲(戸籍収集の有無 等)で変動します。弊所では相続登記/贈与登記の基本報酬+実費でお見積りいたします(相続は戸籍収集の有無で幅が出ます)。

税務の基礎設計(誤解しやすいポイント)

贈与税→親→18歳以上の子・孫は特例税率の対象。基礎控除110万円超に累進税率適用。
暦年贈与の持戻し期間→令和6年以降の贈与は7年の生前贈与加算が拡大。節税設計は加算前提で。
相続時精算課税→累計2,500万円まで贈与税非課税だが、相続時に合算清算。令和6年以降は年110万円控除も導入。選択後は暦年課税へ戻せない点に注意。
みなし贈与(売買装い)→著しく低廉な売買は贈与認定リスク。対価設定は時価相当の裏付けを。

よくある落とし穴(実務注意)

1.期限管理→相続登記3年、遺産分割成立から3年の追加期限など複数の時計が回ります。迷うときは相続人申告登記でまず期限確保。
2.共有登記の不便→将来の売却・担保設定に全員同意が必要。将来の出口を見据え、単独承継+代償金も検討を。
3.贈与直後の未登記→第三者対抗力なし。生前贈与は即時登記が原則。
4.評価と税の整合→固定資産評価額、路線価、時価評価の混在に留意。登録免許税(固定資産評価)/相続税(相続税評価)で軸が違います。

クイック比較表・必要書類のちがい

書類 贈与 相続
登記事項証明/固定資産評価証明
身分関係書類(戸籍等) 住民票(受贈者)中心 被相続人の出生~死亡の連続戸籍、相続人全員の戸籍等本籍確認、除票 等
権利関係 贈与契約書、贈与者印鑑証明 遺言書または遺産分割協議書、相続関係説明図、相続人印鑑証明(協議時)
登記原因の書き方 「贈与」 「相続」「遺産分割」等
税の主眼 贈与税・登録免許税2.0% 相続税・登録免許税0.4%


ケースで学ぶミニ設計

認知症対策を意識→居住不動産は家族信託で管理機能を付与しつつ、持分は贈与や遺言で承継設計。遺留分・加算期間の影響を試算した上で決定(登記原因を二段構えで)。
自社株+自宅→株は値上がり前に段階移転(相続時精算課税)、自宅は遺言+相続登記で小規模宅地等と整合。税理士連携で相続税・所得税・登録免許税を横断管理。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、親から子へ不動産の名義変更、相続と生前贈与の最短ルートと費用・書類チェックリストを解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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