株式買取請求権の通知時期と実務上の配慮
株式買取請求権とは
組織再編(合併・会社分割・株式交換など)において株主に大きな影響が及ぶ場合、会社法は反対株主に株式を会社に買い取らせる権利(株式買取請求権)を認めています。
行使のためには、
・株主総会前に反対の意思を通知
・株主総会で反対票を投じる
・効力発生日の20日前から前日までに会社へ買取請求
という流れを経る必要があります。
通知のタイミングに関する規定
会社は、株式買取請求期間が始まる前までに、株主に対して通知を行わなければなりません(会社法785条2項等)。
ただし条文上、通知内容は「組織再編を行うこと」「相手会社の商号・本店」のみであり、手続の流れまでは記載義務がありません。
実務上の論点
今回、株主総会の決議後に通知を予定するケースが問題になります。
法的観点
・決議後に通知を行っても、形式的には「効力発生日の20日前までに通知」がなされていれば違法ではありません。
・また、決議に賛成した株主であっても通知は必要で、全員賛成のときのみ通知不要となります。
実務上の観点
・株主は制度自体を知らないことが多く、決議後に「買取請求権がありますが賛成したので行使できません」と通知されると、会社がわざと権利行使を妨げた印象を与えかねません。
・株主との関係維持・信頼確保の観点からは、株主総会前に通知するのが望ましいといえます。
実務対応のバリエーション
・株主数が少なく顔ぶれが固定している場合:簡素な通知で足りる。
・株主数が多く、反対可能性が不明な場合:招集通知と併せて通知するのが一般的。
・株主総会後に送付する場合:公告による通知を選択し、「目立たせない」形をとることも可能。
本コラムのまとめ
株式買取請求権の通知は、法的要件を満たせば決議後でも可能ですが、株主との関係や会社の信頼を考えれば総会前に通知するのが望ましいです。
実務では「法的適法性」「費用・手間」「会社イメージ」の三要素を踏まえて判断し、公告方式や個別通知方式を使い分けることがポイントとなります。
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本日は、株式買取請求権の通知時期と実務上の配慮について解説いたしました。
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