合同会社

職務執行者はいつ選任すべきか?定款作成日との関係と法務局の実務的判断

設立時における選任時期の原則

合同会社の設立登記において、業務執行社員が法人である場合には、職務執行者の選任書面を添付する必要があります(商業登記法施行規則第61条第1項)。
ここで問題となるのが、「職務執行者はいつ選任すればよいか」という点です。
登記実務では、定款作成日や社員の確定時期との前後関係が重要視されるため、選任のタイミング次第では、登記が受理されない可能性もあります。

【ケース比較】選任時期によって受理・不受理が分かれる実例

ケース 選任時期 法務局の判断(実務上)
A社が定款作成の3か月前に職務執行者を選任 かなり早期 否認された例あり(定款作成日との乖離が大きすぎる)
A社が定款作成当日または直後に選任 適時 受理されやすい
A社が取締役会で「○○合同会社の業務執行社員に就任した場合、○○氏を職務執行者に選任する」と条件付決議 形式次第 法務局の裁量により判断分かれる
議事録に「職務執行者の選任」との明示なし 書面不備 登記不可となるリスク大


なぜ時期が問題になるのか?

職務執行者の選任は、業務執行社員である法人が、その業務執行のために選ぶ代理機関であることから、

「社員になることが確定していない段階では選任権限がないのではないか」
「会社設立の準備段階ではまだ選任が有効に成立しないのではないか」

といった法的・実務的な疑義が生じます。
ただし、これらは法律上明確に制限されているわけではなく、実際には“法務局の判断(登記官の裁量)”によるところが大きいのが実情です。

登記官の“安全志向”に留意を

法務局は、「登記申請後の補正」や「却下」リスクを避けるため、形式的に整った決議書面・選任書面を要求する傾向があります。

そのため
・議事録の内容があいまいな場合は、補正指示や却下対象になる
・定款作成日より著しく前に決議がなされている場合は、登記官の判断で不受理になることがある

実務上の推奨対応(司法書士としての視点)

対応ポイント 解説
定款作成日と同日または前後1週間以内に選任決議を行う 法務局からの補正指示を避けるためには、時期の整合性を重視すべき
決議書面には「○○を職務執行者に選任する」と明確に記載する 事業概要への氏名記載だけでは不十分。明示された選任行為が必要
議事録の作成者・署名者も明記する 不備があると登記官が疑義を持つため、形式的要件も満たすこと
法務局との事前相談(事例共有)も有効 グレーなケースでは担当登記官の判断を仰ぐべき


登記を通すための“時期と形式”を意識しましょう

法的には職務執行者の選任時期に明確な制限はないが、実務上は定款作成日前後が無難
選任内容があいまいな議事録や、定款作成と関係の薄い時期の決議は、登記官の裁量で却下される可能性もあります。

書面の“体裁”と“整合性”を重視し、必要に応じて法務局と相談をする必要があります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、職務執行者はいつ選任すべきか?定款作成日との関係と法務局の実務的判断について解説しました。
次回【第3弾】では、「職務執行者を複数人選任した場合の業務執行・議決権の扱い」という、実務でもあまり議論されていない論点を取り上げます。

会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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