合同会社

なぜ職務執行者の選任が必要なのか?合同会社における法人社員とその業務執行の仕組み

合同会社における「職務執行者」とは

合同会社は、株式会社と異なり機関設計の柔軟性が高く、定款の定め方によって組織運営の仕組みを自由に設計できます。その特徴のひとつが、法人が社員(≒出資者かつ業務執行権限者)となれる点です。
しかし、法人は自然人と異なり、実際に業務を執行することができません。このため、会社法第598条に基づき、「職務執行者」の選任が必要になります。
これは、法人社員が「誰を通じて会社の業務を実行するのか」を明確にするための制度です。

職務執行者の登記が必要なケース

職務執行者は、法人が代表社員となる場合に限り、登記事項となります(商業登記法第94条第2項)。代表社員でない場合は登記されませんが、実務上は職務執行者が社内で意思決定や署名押印を行う場面が多いため、内部統制上の整備は重要です。

ケース 職務執行者の登記必要性
法人が業務執行社員かつ代表社員 登記必要(法務局に職務執行者の選任書面を提出)
法人が業務執行社員だが代表ではない 登記不要(選任書面は保存すべき)


職務執行者を定款に定められるか?

「定款に職務執行者を直接定めてしまえばよいのでは?」という疑問もありますが、これについては法務省は否定的な見解を取っています。
会社法第598条第1項では、「法人である業務執行社員は、その業務を執行するために職務を執行する者を定めなければならない」と明記されており、職務執行者は法人の機関決議によって選任する必要があると解されています。

※定款で員数や資格要件(例:「自社の役員に限る」等)を定めることは可能です。

定款に職務執行者を定められない実務的な理由

合同会社の設立登記時には、以下の添付書類が求められます。

業務執行社員が法人である場合:その法人の機関が職務執行者を選任したことを証する書面

このため、定款ではなく別途、取締役会決議や社員総会議事録を用意する必要があります。
仮に定款に記載していたとしても、それだけでは登記は受理されません。

合同会社の設計における職務執行者の意義

・法人が合同会社の業務執行社員となる場合、自然人による業務執行が必須
・その役割を担うのが「職務執行者」であり、登記対象にもなる重要ポスト
・職務執行者の選任は法人自身の決議行為によってのみ有効であり、定款では直接定められない
・設立時の登記をスムーズに進めるためには、職務執行者の選任手続を適正な時期・方法で整備する必要がある

手続きのご依頼・ご相談

本日は、なぜ職務執行者の選任が必要なのか?合同会社における法人社員とその業務執行の仕組みについて解説しました。
次回は、職務執行者の選任次期と法務局の実務対応について解説いたします。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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