会社設立時の資本金の決め方について
資本金
新しく会社を設立する際には、資本金の額を決定し、それを登記する必要があります。
資本金の額については、正解があるわけではなく、会社の代表者自身が状況に応じて適切な金額を選定する必要があります。
ここでは、資本金の額を決める際に考慮すべきポイントをいくつかご紹介しますので、参考にしてください。
業種別の適切な資本金の金額
資本金の額は、業種や事業規模に応じて異なります。
一部の業種では法律や許認可で最低資本金が定められている場合があり、その他の業種でも事業の性質に応じた資本金設定が必要です。以下、主な業種別の目安を示します。
1. 小売業・飲食業
目安額:50万円~500万円
ポイント:開業資金として、初期在庫や店舗の賃料、内装工事費などの費用を考慮する必要があります。
資本金が少なすぎると、取引先や仕入れ先からの信用が低下する可能性があるため、ある程度の金額を設定することが望ましいです。
2. 建設業
目安額:500万円~1000万円以上
ポイント:建設業では許認可が必要で、多くの場合、最低資本金が500万円以上に設定されています。
工事受注時の信用力を確保するため、資本金が高い方が有利になる場合があります。
3. IT・ソフトウェア開発業
目安額:100万円~300万円
ポイント:初期投資が比較的少ないため、資本金を低く設定することが可能です。
ただし、クラウドサービスの利用料や人件費を運転資金として確保する必要があります。
4. 不動産業
目安額:1000万円~5000万円以上
ポイント:不動産業では大きな資金が動くため、資本金の額が信用に直結します。
宅地建物取引業の免許を取得する場合、資本金が少ないと財産的基礎の不足と見なされる可能性があります。
5. 金融業
目安額:5000万円~1億円以上
ポイント:金融商品取引業者など、法律で最低資本金が定められている業種です。
事業規模や取扱額に応じて、さらに高額な資本金を設定する必要がある場合もあります。
6. 製造業
目安額:300万円~1000万円以上
ポイント:工場や設備への初期投資を考慮する必要があります。
設備のリース契約や原材料の仕入れ先との信頼関係を構築するため、ある程度の資本金が必要です。
7. 運送業
目安額:500万円~1500万円以上
ポイント:一般貨物自動車運送事業の許可を得るには、一定以上の資金が必要です。
車両の購入や維持費用を考慮し、運転資金を確保する必要があります。
最低資本金が必要な業種
以下の業種では、法律で最低資本金が設定されている場合があります:
・第一種貨物利用運送事業:300万円以上(規模に応じて)
・建設業:500万円以上(許可取得時)
当面の運転資金を確保する
会社設立時には、資本金と資本準備金の合計額を発起人が払い込む必要があります。この資金が設立当初の運転資金となるため、事業運営に必要な金額をしっかり見積もることが重要です。
目安として、3~6か月分の運転資金を資本金として設定するケースが一般的です。これにより、事業の初期段階で資金不足に陥るリスクを抑えることができます。
税務面での影響も検討する
資本金の額は税務面にも影響を与えます。たとえば、資本金を1000万円未満に設定すると、設立後の消費税や法人住民税において一定の節税効果が得られます。このような税務上のメリットについては、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
また、資本金のうち半額までを資本準備金として計上することが可能です。これにより、増資などの場面においては、登記時の登録免許税(資本金の0.7%、最低3万円)を節約できる場合があります。
資本金の変更には手間がかかる
設立後に資本金の額を変更する場合、株主総会の決議や変更登記手続きが必要です。
特に減資の場合は、会社債権者への1か月以上の公告が必要になるなど、手続きに時間と労力を要します。そのため、資本金の額は慎重に検討して設定することが大切です。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、会社設立時の資本金の決め方について解説しました。
会社設立時の資本金は、事業の信用、運転資金、許認可の条件、税務面での影響を総合的に考慮して決める必要があります。
一度決めた資本金を変更するのは手間がかかるため、慎重に検討して適切な額を設定することが重要です。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。