現物出資に伴う不足額担保責任とは?発起人や設立時取締役の責任について解説
現物出資に伴う不足額担保責任とは?発起人や設立時取締役の責任について解説
現物出資による設立
会社を設立する場合、出資者から金銭を募るのが一般的ですが、「金銭」ではなく「物」で出資(現物出資)することも可能です。
一方で、現物出資は「物」を出資するという特性上、不足額が発生した場合にはその不足を補う責任が発生します。
このコラムでは、現物出資に伴う不足額担保責任についてわかりやすく解説します。
現物出資とは
現物出資とは、会社設立や増資のタイミングにおいて、金銭以外の財産で出資することです。
会社の資本金は金銭出資が一般的ですが、現物出資であれば、「減価償却を活用した節税対策」「手元に資金が無くても発起人になれる」「備品購入コストの削減」などのメリットがあります。
譲渡が可能かつ貸借対照表に資産として計上できるものであれば、基本的に現物出資が認められます。
会社増資の場面であれば誰でも現物出資が認められますが、会社設立の場合に現物出資が認められるのは発起人のみとなるため、注意が必要です。
また、会社設立の際に現物出資を行う場合には、「資産の詳細情報」や「現物出資する人の氏名と住所」などを定款に記載する必要があります。
現物出資に伴う不足額担保責任
現物出資をする場合、原則として裁判所が選任した検査役の調査を受ける必要があります。現物出資した財産の評価額が定款に記載された金額と比べて低かった場合、会社に不足の損害を与える可能性があるからです。そのため、検査役は、現物出資された資産の価額を調査し、取得する株式の価値に見合うものかどうかを厳正に判断します。
会社法では、会社設立時の現物出資に伴う不足額担保責任について、次のように規定しています。
① 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が、当該現物出資財産等について定款に記載され、または記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して当該不足額を支払う義務を負う。
② 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第28条第1号の財産を給付した者又は同条第2号の財産の譲渡人を除く。第2号において同じ。)および設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
(1) 第28条第1号または第2号に掲げる事項について第33条第2項の検査役の調査を経た場合
(2)当該発起人または設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
③ 第1項に規定する場合には、第33条第10項第3号に規定する証明をした者(以下この項において「証明者」という。)は、第1項の義務を負う者と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をすることについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
現物出資した財産の価額が、定款に記載された価額よりも著しく低かった場合、発起人および設立時取締役は、連帯して会社に対して不足額を支払う責任を負います。
たとえば、現物出資財産の価額が定款には500万円と記載されていたにもかかわらず、調査の結果300万円の価値しかなかったことが判明した場合には、不足額である200万円を発起人および設立時取締役が支払うことになります。
あとあとトラブルを起こさないようにするためにも、取締役において十分な調査をした上で登記申請を行うようにしましょう。
現物出資された財産の評価額が、定款に記載された価額よりも著しく低かった場合、発起人と設立時取締役は、連帯して会社に対して不足額を支払う責任を負います。
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