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遺産分割の遡及効とは?民法では?-法務担当者向け基礎知識-

遺産分割の遡及効とは?民法では?

民法では、相続は、死亡によって開始する(民法882条)とされています。
その死亡した人(被相続人)の遺産について、誰がどの財産をどのくらい貰うのかが最終的に決定、つまり遺産分割協議が成立すると、遺産分割協議の効力は、被相続人の死亡した日(相続開始日)にさかのぼって発生します(民法909条)。
このさかのぼって効力が発生することを、法律では「遡及効(そきゅうこう)」といいます。
つまり、遡及する(さかのぼって)効(効力を発生させる)ですね。

第三者の保護

しかし、遺産分割協議に遡及効があるとしても、第三者の権利を害することはできないとされています(民法909条但書)。たとえば、相続人の中のひとりがお金に困っていて、ある不動産について、法定相続分の割合で相続による登記をしてしまい、第三者に自分の持分を売却し買主へ持分の移転登記をしました。その後遺産分割協議を行い、他の相続人がその不動産を単独で所有することとなりました。ここで遡及効を貫くと、その不動産は相続開始からその相続人の所有となっていたことになり、相続人のひとりから持分を買った買主はその不動産について無権利者となってしまいます。

それでは、買主など、利害関係のある第三者にとって酷な結果となってしまうため、遺産分割協議の遡及効は第三者の権利を害することができないとされているのです。なお、遺産分割協議前の第三者が保護されるためには、登記などの対抗要件を備えていることが必要とされています。

他の場面での遡及効

このように相続において遡及効という言葉がでてくるわけですが、民法では、ほかにも多くの場面で遡及効という言葉がでてきます。
たとえば、無権代理の追認・取り消し・時効の効果・相殺の効力・契約の解除などがあります。
一例として、無権代理の追認とは、そもそも代理をする権利がない人が代理人として契約などを行った場合、本人が後からその契約などを認めることをいいます。
この追認によって、代理をする権利がない人が代理人として行った契約は、最初から有効な契約であったことになります。

つまり日付をさかのぼって、効力が発生するということになります。

刑法の場合(余談)

余談ですが、この遡及効について刑法の場合は少し話が変わってきます。
憲法では遡及処罰が禁止されています(憲法39条)。

仮に、刑法に遡及効があるとすると、実行時には適法だった行為が、後で違法とされることによって、罰せられることになります。これでは人権保障に反することになるため、遡及処罰は禁止されています。

また、遡及効の対義語としては、将来効があります。遡及効とは反対に、ある時点から将来に向かって効力が発生することを意味します。
このように、法律には、日常生活では耳にすることがないような言葉が数多く存在しています。
しかし、その言葉の内容を理解することができれば、法律をもっと身近なものとして感じてもらえるのではないかと思い、遡及効という言葉について紹介させて頂きました。

さいごに

いかがでしたでしょうか。相続に関するご相談は、永田町司法書士事務所までお問い合わせください。

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