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無権代理と相続 -法務担当者向け基礎知識-

無権代理とは

無権代理とは、大まかにいうと、本人から代理権を与えられていないのにもかかわらず、ある者が、あたかも本人の代理人のように振舞って法律行為を行うことをいいます。基本的には無権代理による意思表示の効果は本人には帰属しません(難しい表現をすると表見代理が成立する場合を除いて、ということになります)。もっとも本人が無権代理人がした行為を良しとして認めれば(追認するといいます。)その無権代理人がした行為の効果は本人に帰属します。

今回は、無権代理における特殊な事例として、相続が関係する無権代理を取り上げてみたいと思います。
例として、父である本人A、子である無権代理人B、相手方Cを登場人物とします。無権代理人Bが本人Aの代理人だと勝手に称して相手方Cとの間で、Aが所有している土地をCとの間で売買契約をしました。この場合、Bには代理権がないのですから、Aがその契約について追認を拒絶すると、その契約はAに対して効力が生じないことになります。追認とは、字のごとく追って認めるということですから、無権代理人がした契約を後から認めることによって、当該契約の効力をA本人に生じさせることです。その追認を拒否するわけですから、当然のことながらその契約は本人に対して効力を生じません。

一方、民法では、相手側Cを保護する規定も存在します。無権代理人Bとの間で契約をしたCは、Aが追認をするのかしないのかわからない状況では不安定な立場に置かれるため、Aに対して相当の期間を定めて契約を追認をするどうか確答するように催告することが可能です。しかし、Aからの追認もなく、相手側CもAに催告をしない状態で、Aが死亡したとします。この場合相続が発生します。

子である無権代理人Bが勝手に売却してしまった土地はどうなるのでしょうか。父Aが死亡して、無権代理人Bがその土地を相続する事になった場合、子Bと、相手側Cと間の無権代理によってされた契約についてはどうなるのでしょうか。元々追認するか拒絶するか選択する権利があった父Aが死亡したことによって、追認する又は追認を拒絶する権利が子Bに相続されることになります。相続人がひとりしか存在しないことを単独相続といいます。

相続人が子B以外に存在しない単独相続の事案において、判例は、「無権代理人が本人を相続し本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたった場合においては、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である」としています。相続人が複数存在する場合を共同相続といいます。では、子Bに兄弟姉妹がいて、Aを共同相続をすることになった場合どうなるのでしょうか。

この場合、判例は、「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」としています。

このように、本人を単独相続したのか共同相続したのかで結論が異なるのです。


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