民法基礎知識

民法物権 -法務担当者向け基礎知識-

 

物権(ぶっけん)とは

物を支配する権利の事を言います。民法175条から398条の22までが物権の規定になっています。
物権にはいくつかの種類がありますが、その中でも所有する権利、つまり「所有権」が典型的な物権です。

所有権とは

自分が持っている持ち物を想像していただけると分かり易いでしょう。所有権の持ち主は、物を全面的に支配する権利をもっており、その所有している物を自由に使用したり他の人に貸して収益ができる他、売ったり捨てたりと処分する事も自由です。この物権の中で、使用や収益だけができる権利を「用益物権」といい、物を処分して得られる価値を把握する権利を「担保物権」といいます。

一物一権主義

物権には排他性(他を排する強い権利と想像して下さい)があり、同一物には同一の内容の権利は1つしか存在しません。これを一物一権主義とよびます。つまり自分が支配している物に対して、他の人が同じ内容によって支配する事はできないということです。物権は一定の「人」に対して行為や請求をすることを内容としている「債権」とは別のものになります。

また、物権には種類があり、「用益物権」については、1.地上権、2.地役権、3.永小作権、4.入会権が存在します。「担保物権」については、1.留置権、2.先取特権、3.質権、4.抵当権が存在します。
所有権が物の全体を支配するのに対し、支配の範囲に一定の制限があるものを、「制限物権」と呼んでいます。「制限物権」には、用益を目的とする「用益物権」と、債権担保を目的とする「担保物権」があります。

用益物権

「用益物権」とは、物を一定の限られた範囲内で支配する権利です。例えば、地上権は、他人の土地において工作物を所有するため、その土地を使用する権利はありますが、その土地自体を処分することはできません。

担保物権

「担保物権」とは、読んで字のごとく担保のための物権です。お金の貸し借りで言うと、貸した側(債権者)が、借りている側(債務者)に対し、その返済を確実にしてもらうために、債務者側の物の担保価値を利用するための権利です。例えば、マイホームを購入する際には銀行からお金を借りることがほとんどだと思いますが、買った家(土地と建物)には銀行の抵当権が付けられるのが通常です。この抵当権が担保物権の一種です。仮に債務者がローンの返済ができなくなったときは銀行はその担保となった家(土地と建物)を競売にかけそこから債権を回収することになるわけです。

占有権と本権

民法上の「物権」は、大きくわけて、「占有権(民法180条~205条)」と「本権」(適法に物を支配する権利)に分かれ、「本権」は「所有権(民法206条~264条)」と「制限物権(民法265条~398条の22)」に分類されます。その「制限物権」が「用益物権(民法265条~294条)」と「担保物権(民法295条~398条の22)」と分かれているとイメージして頂けると良いでしょう。

物権法定主義

このように、「物」に対する権利の中でも、多数の法律である権利が存在しています。その物に対して、自分の物であることを主張したり、それを他人に譲ることなど、人と関わっている以上様々な問題が発生します。これを法律によって規制することにより、トラブルとならないように細かな法律が作られているわけです。この物に対する権利は法律によって定められたものだけが認められており、契約によって勝手に物権を創設することは認められていません。これを「物権法定主義」といいます。

 

永田町司法書士事務所

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