株主総会の招集通知はいつ出す?期間計算と実務の落とし穴を司法書士が解説
招集通知はいつ発送すべきか?
株主総会の運営において、「招集通知はいつ発送するべきか?」という問いは、毎年必ず浮上する実務上の悩みのひとつです。
会社法では、「株主総会の日の2週間前までに通知すること」と定められていますが、
この「2週間前」とは具体的にいつのことなのか――
土日祝をどう数えるのか、当日を含めるのか、みなし決議の場合はどうなるのかなど、
条文だけでは判断しきれない期間計算の壁が実務担当者の前に立ちはだかります。
本コラムでは、会社法の期間計算ルールをふまえつつ、
司法書士として実際に相談を受けてきた事例を交えながら、招集通知の発送タイミングに関する実務的な注意点をわかりやすく解説します。
2週間前までに発送」とは?会社法の期間ルールを正確に押さえる
株主総会の招集通知は、会社法により以下のように規定されています。
株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送しなければならない。
この「2週間前までに」とは、会社法における期間計算のルール(会社法・民法共通)に従って、
正確にカウントする必要があります。
基本原則:「初日不算入・末日算入」
期間計算の原則は以下のとおりです。
計算対象 | 処理ルール |
---|---|
初日(起算日) | 含めない(=株主総会当日は含まない) |
末日 | 含める(=通知発送日は含む) |
つまり、「○○日後に実施」ではなく、「○○日前までに通知する」などの表現の場合、発送日は逆算して算定されます。
例:2025年6月30日(月)が株主総会開催日なら?
・初日(総会日):含めない
・そこから2週間前=14日前までに通知
・6月16日(月)までに招集通知を発送する必要があります
ここで間違いやすい落とし穴
・「2週間前=14日前」ではあるが、「2週間前の日」=開催日の同じ曜日の2週前ではない
・「月曜開催なら、2週前の月曜」と単純に考えるとズレる可能性あり
このように、「条文通りにやったつもりでも、期間計算の誤認で発送日が遅れ、株主総会手続に瑕疵が生じる」事例は後を絶ちません。
「〇日前まで」の計算に注意
土日祝をまたぐケースとみなし決議との違い
株主総会の招集通知を出す際に最も多いミスのひとつが、「期間の数え間違い」です。
特に、起算日と末日、そして土日祝日が絡む日数のカウントには要注意です。
起算日を含める?含めない?
会社法では、期間計算について民法の規定を準用しています。
これにより、以下の原則が適用されます。
・「日・週・月・年」で期間を定めた場合、起算日は含めない(=初日不算入)
・したがって、たとえば「○日前までに通知」なら、株主総会当日は数えず、その前日からさかのぼってカウントします。
具体例
総会日:2025年6月30日(月)
→ 「2週間前の日までに通知」=6月16日(月)が期限日
(※6月30日から数えて14日前)
土日祝日の扱いに注意!
原則として、期間内に土日祝が含まれていても、その分を除外しません。
つまり、「14日前までに通知」といっても、その間に何日休日があっても、カウントに影響はありません。
ただし、通知の「発送」が郵送で行われる場合には、郵便事情をふまえて、前倒しするのが実務上の常識です。
「みなし決議」の場合はカウント方法が異なる
会社法第319条の「書面決議(みなし決議)」では、期間の起算点が異なります。
通常の株主総会 → 総会日から逆算(末日算入)
書面決議(319条)→ 提案日が起算日(初日算入)
この違いを誤ると、書面決議の有効性が否定されるリスクがあるため注意が必要です。
実務上のカレンダー確認が必須
・起算日と末日の数え方をあらかじめ確認する
・総会開催日と「同じ曜日の2週前」を盲目的に選ばない(※間違いやすい)
・土日祝をはさむ場合、直前の平日発送ではリスクがある
その発送日、間違っていませんか?
実務で多発するトラブル事例と回避策
会社法の定める「2週間前までに通知すべき」というルールはシンプルに見えますが、
実際には「通知日を1日勘違いした」「土日を誤認した」など、思わぬ計算ミスで手続全体に影響を及ぼすことがあるのが実務です。
ここでは、司法書士の現場で実際に起きた典型的なトラブルと、その回避策を紹介します。
【事例①】開催日から起算して14日前を勘違い
状況
6月30日(月)開催の株主総会に対して、6月17日(火)に通知を発送。
問題点
起算日(6月30日)を含めてしまい、「実際には13日前に通知」という扱いに。
結果
株主から「手続に不備がある」と指摘され、臨時総会のやり直しを検討。
【事例②】「2週前の同じ曜日」で通知を出したら1日ズレていた
状況
株主総会を月曜に設定したため、「2週前の月曜=6月16日」と判断して通知発送。
問題点
実際は起算計算がズレており、正確には6月15日(日)が発送リミットだった。
結果
総会は開催されたが、登記申請時に議事録の有効性が疑われ、補正を求められた。
【事例③】書面決議の提案日を誤って「発送日」でカウント
状況
第319条書面決議(みなし決議)で、「発送日から2週間経過で成立」と誤解。
問題点
発送日=提案日ではない。提案書に記載した日付が起算点になる。
結果
決議の成立日が1日ズレてしまい、配当基準日との整合が取れなくなった。
トラブル回避のための3つの実務ポイント
1.会議体ごとに期間計算のルールを区別して把握すること
→ 通常の総会と書面決議では、カウント方法が異なる
2.起算日と末日の確認に、必ず「実日カレンダー」を併用すること
→ 勘と記憶だけではなく、カレンダーに起算線を引いて確認
3.毎年の開催日が決まっているなら「逆算スケジュール表」をルーチン化
→ 3月決算・6月総会の会社であれば、固定スケジュールに組み込んでおく
ミスを防ぐにはどうする?
発送日を確実に守るスケジュール設計と実務上のコツ
招集通知の発送日は、登記・株主総会の有効性・取締役責任などにも関わる、極めて重要な要素です。
発送日を間違えないためには、単に条文を読むだけでなく、実務として確実に守れる仕組み作りが必要です。
実務で使える逆算スケジュール表(3月決算会社の例)
作業内容 | 期日例(総会日:2025年6月30日) |
---|---|
総会日 | 6月30日(月) |
逆算14日 | 6月16日(月) ←通知発送リミット |
通知印刷・封入完了 | 6月12日(木) |
取締役会による総会招集決議 | 6月10日(火)までに |
計算書類の確定・監査報告取得 | 6月上旬 |
発送リミット=「逆算14日」では遅すぎる
・郵便事情(週末配達なし)や株主側の都合を考慮すると、余裕をもって3~4日前に発送するのが現実的
・特に期末に業務が集中する企業では、「前倒し設計」必須
「曜日固定」と「開催日固定」は別物
「毎年6月の最終月曜に開催」など、開催日を固定している会社では、前年の暦と起算日がズレることも多く、注意が必要です。
→ 「6月の最終月曜」=2025年6月30日(月)
→ 「2週前の月曜」=必ずしも14日前とは限らない
司法書士からのアドバイス
・「○週前の同じ曜日」ではなく「○日前」基準で起算する癖をつけましょう
・発送日だけでなく「提案日」「取締役会日」「計算書類の承認日」もスケジューリングに含めること
・書面決議やオンライン総会とのハイブリッド開催時も、カウント方法の違いに注意が必要です
手続きのご依頼・ご相談
本日は、株主総会の招集通知はいつ出す?期間計算と実務の落とし穴について解説いたしました。
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